観測記録より推定した波形、水平動スペクトル、増幅度と計算による結果を図3−4−10、図3−4−11、図3−4−12、図3−4−13、図3−4−14、図3−4−15、図3−4−16に示す。黒が観測結果、青がシミュレーション結果を表す。波形の右端に、各ピーク振幅をcm/s(kine)で表示している。基準観測点のMIEH08(松阪)では、波形の一致がきわめて良好で、周期1秒から10秒までの基盤入力波形が、高精度に推定されているのが確認できる。観測点の付近に、平成14年度三重県地下構造調査で実施された微動アレイ探査観測点(N0.1〜15)が存在する場合は、S波速度構造図に、微動アレイ探査によるモデルを赤線で表示した。基盤深度が200m以上違っている観測点が存在するが、両者の観測地点が完全に一致しておらず、距離が2〜5km離れているためであると説明できる。例えば、MIEP27(河芸)では、反射法測線が通っているため、微動アレイ観測点No.11との間で基盤深度が300m程度違っていることが事実として確認できる。また、MIE009(松阪)は盆地周縁部にあたるため、微動アレイ観測点No.15との間で基盤深度が急激に変化すると予想される(3.4.4で後述)。このため、両者の違いは堆積層S波速度のトレンドの全体的な違い(第1ピーク周期)についてのみ比較の対象とする(図3−4−17−1、図3−4−17−2、図3−4−17−3、図3−4−17−4、図3−4−17−5、図3−4−17−6)。
1.5秒程度より高周波側では、表層の効果が大きいと考えられる。表層部は、K−NetのPS検層・土質データに見られるように、深さ方向にも水平方向にも不均質性が強く、三次元モデルでは再現されていない。また、これによる散乱効果も大きいと考えられる。今回は、震源スペクトルが有効であり深部地下構造の増幅効果を反映する、2〜10秒のやや長周期帯を主な比較対象とした。
図中より、堆積層の卓越周期を反映した理論ピークが、7秒台以下で確認でき、不明瞭であるが、観測記録より推定した増幅度のピーク周波数と概ね対応しているようにみえる。具体的には、MIEP05(桑名)、MIE003(四日市)、MIEP07(鈴鹿)で7秒台を示し、MIE006(津)で3.2秒、MIE009(松阪)では0.9秒、MIE010(伊勢)では、0.5秒未満であった(図3−4−20)。また、周期1秒以上の領域においては、理論増幅度のレベルが観測記録より推定した増幅度のレベルと2倍・半分以内の精度において整合している。