3−1−7 微動探査

(1)短周期および及びやや長周期の微動による卓越周期分布

今岡(2001)によると、三重県内で観測された82点(図3−1−7)の微動観測の解析結果から、伊勢平野ではH/Vスペクトル比と水平動スペクトルの卓越周期はよく一致しており、微動の卓越周期は、表層地質が中新統以前で岩盤までの深さが浅いと思われる山間地では0.2秒以下と非常に短いのに対し、伊勢平野では、卓越周期が3〜5秒程度と長くなっている。また、微動の平均H/V値は、表層地質が柔らかくなるにつれて増大し、伊勢平野と上野盆地では、沖積層で1.6以上、丘陵地や台地で1.4〜1.6となる。

 

(2)微動アレイ探査

平成14年度調査においては、地下構造調査の一環として、特に基盤深度が深いと想定される箇所を中心として、北勢町(当時)、桑名市から松阪市に至る15箇所に観測点を配置し、微動アレイ探査を実施した(三重県,2003)。図3−1−8には、桑名市〜松阪市(南北方向)及び菰野町〜桑名市間(東西方向)の微動アレイ探査結果を断面的に並べた。この結果、0.2〜0.3km/s、0.5〜0.6km/s、0.8〜1.0km/s、1.2〜1.5km/s、3.6〜3.8km/sからなる5層構造のS波速度構造が得られている。これらの速度構造と地質層序との関係を特定できる場所が少ないが、速度値から考えれば、最下位の3.6〜3.8km/s層が中古生層や花崗岩などの基盤岩類に相当するものと考えられる。ボーリングや反射法探査などとの比較によって、基盤岩深度は、北側から海岸沿いの桑名市(No.3)〜楠町(No.8)にかけて、1700〜2100m程度であり、南に向かって徐々に深度が浅くなり、鈴鹿市郡山町付近(No.11)で1500m程度と推定される。さらに南に向かうと、基盤深度は鈴鹿市郡山町付近(No.11)と三重県庁(No.13)との間で急激に浅くなり、県庁付近では700m程度と推定され、松阪市(No.15)では400m程度と推定される。三重県(2003)では、鮮新統と中新統の境界は1.2〜1.5km/s層(1.4km/s相当層)中に位置していると予想されるが、図3−1−8の東西断面に示したように、検出可能な速度増加が認められず、鮮新統内の速度変化の方が、鮮新統と中新統の速度変化より大きいと結論づけている。また、中新統のVs=1.4km/s相当層は、No.3〜No.11付近までは1000m程度の層厚を有しているが、No.11〜No.13間で急激に薄くなる傾向を示し、No.13〜No.15では100m以下となる。

以上の既存資料から、平成14年度調査においては、基盤岩深度、鮮新統上面深度、工学的基盤上面相当深度を推定している。図3−1−9には推定された基盤岩深度を示した。これによると、基盤岩深度は、伊勢湾断層、白子−野間断層、楠町、四日市市海岸沿いおよび川越町を囲む範囲で最も深く、2000mを超えることが想定される。また、平野部においては、桑名市、四日市市付近の養老断層〜桑名断層系を境に東側の基盤深度が急激に深くなることが推定される。