2−1−5 反射法地震探査

図3−1−4に伊勢平野周辺で実施された反射法地震探査位置を示す。長良川河口堰関連及び三重県内の桑名断層、鈴鹿東縁断層帯、布引山地東縁断層帯、中央構造線などの断層を対象とした探査が行われている。この内、三重県桑名市の長良川河口部(水資源開発公団ほか,1995)における東西測線(長良川と揖斐川の間の中堤沿いの約5km)では、深度1700〜1800mで平坦ないしは南西方向に緩やかに傾斜している基盤上面が得られている。また、中新統と解釈された地層は基盤の凹凸を埋めるように堆積し、上位の東海層群と不整合を成しており、その層厚は200m程度である。三重県員弁郡北勢町及び大安町(当時)で実施した東西測線(三重県、1996)においては、鈴鹿東縁断層帯東側において深度1100mから1800mで西に穏やかに傾斜している基盤上面が得られており、基盤上面は鈴鹿東縁断層帯(北勢町奥村付近から新町付近)を境に深度200mまで変化している。水資源開発公団ほか(1995)による伊勢湾内での調査結果からは、伊勢湾断層が全東西測線ではっきりと追跡できる。最も北側に位置する東西測線の基盤深度は伊勢湾断層の西側で約2300m、東側で約1400mを示している。基盤上面から中新統上面までは緩やかな西傾斜を示しているが、それ以浅はほとんど平坦である。中新統の層厚は500m程度である。また、各地層とも南北方向にはほぼ平坦である。また、平成15年度に、三重県によって実施された反射法地震探査(三重県、2004)では、四日市市から菰野町に至る東西方向の探査結果が得られている。これによると、この地域の基盤は、大小の凹凸を伴い、全体的には緩やかに西上がりとなり、鈴鹿東縁断層帯で地表に露出している。鈴鹿東縁断層帯の東側では、基盤深度は1500m〜2000m程度であり鈴鹿東縁断層帯の落差は1700m程度におよぶ。この調査では、基盤上位の堆積層の構造も明確にされており、それらの構造は、東端から三重郡菰野町千草付近まで緩やかに西に向かって落ちているが、四日市市東坂部町付近で大きく変化している。この変化は、四日市断層に対応していると考えられる。しかしながら、この結果と水資源開発公団ほか(1995)による結果を比較すると、両測線の距離の差約3km程度に対して、基盤の落差は600mにおよび(図3−1−5)、両測線の間に、何らかの構造変化が存在する可能性が指摘された。以上のように、収集した範囲では、伊勢平野の中央部付近で深部を対象とした反射法地震探査は、三重県(2004)によるものだけあり、広域の構造を推定するための既存資料は十分蓄積されていないのが現状である。また、平成15年度に三重県によって実施されたS波反射法地震探査によって、四日市市西坂部町付近の基盤上面までのS波速度構造も明らかになった(三重県、2004)が、それ以外の地域では、S波速度構造に関する資料は少ない。