3−3−2 強震計データを用いた地下構造モデルの概略検証

三重県内の強震観測ネットワーク(K−NET)のデータを利用し、微動アレー探査により求められたS波速度構造モデルの検証を行った。

強震計データとして、鳥取県西部地震(2000年10月6日PM1:30発生、M7.3、震源深さ約11km)のデータを使用した。

図3−3−5に、津市と四日市市で観測された同地震の波形記録を示す。この地震では、S波到達後に表面波と思われる成分が確認されており(波形記録中の赤丸と青丸の間の波形)、今回の地下構造モデルの概略検証に適用できると判断した。

図3−3−5 鳥取県西部地震において観測された強震記録

観測された地震記録から、表面波成分と思われるデータを抽出し、南北成分・東西成分および上下成分のフーリエスペクトルを算出し、南北・東西成分のスペクトルを上下成分のスペクトルで除すことにより表面波成分の水平動上下動比(以下、強震観測H/Vスペクトルと称す)を求めた。一方、微動アレー探査により求められたS波速度構造(速度固定解析結果)を基にレイリー波の理論H/Vスペクトル(以下、理論H/Vスペクトルと称す)を算定した。

図3−3−6に強震観測点における強震観測H/Vスペクトルと理論H/Vスペクトルの比較例を示す。強震観測H/Vスペクトルと理論H/Vスペクトルを比較すると、低周波側で1番目に現れるピーク周波数は両者とも良く一致している。しかし、2番目以降に現れてくるピークに関しては、強震観測H/Vスペクトルと理論H/Vスペクトルの対応が悪い。これは、深度100m程度以浅の速度構造が、強震観測点と微動アレー観測点(特にMアレーやSアレー観測点近傍)とで異なるためと考えられる。

図3−3−7に、その他の観測点における強震観測H/Vスペクトルと理論H/Vスペクトルの比較図を示す。地震観測点は、微動アレー探査位置の測定箇所と一致しないため、理論H/Vスペクトルは、地震観測点が最も近接する微動アレー探査の結果を用いて算出した。低周波数側のピーク周波数が概ね対応しているため、微動アレー探査により推定したS波速度構造の妥当性を概略、検証することができたと考えられる。

図3−3−6 強震観測点における強震観測H/Vスペクトルとレイリー波の理論H/Vスペクトルの比較例(強震観測点22218A)

図3−3−7 強震記録におけるH/Vスペクトルとレイリー波の理論H/Vスペクトル