3−2−2 アレー設計

位相速度の分散性を解析するには、地表に複数の微動計を配置し、同時間帯に微動を観測(アレー観測)する必要がある。微動アレー探査では、図3−2−2に示すように中心に1台、円周上に3台、その半分の半径の円周上に3台の微動計を配置(二重三角アレー)し、7箇所で同時に微動観測を行う。

図3−2−2 微動計配置図

本調査では、深度2,000m以上の地震基盤面から深度数10mまでのS波速度構造を推定することを目的としており、目的に合ったアレーの大きさを設定する必要がある。ここでは、伊勢平野で想定される地盤モデルを作成し、位相速度の感度解析から最適なアレーの大きさを検討した。

表3−2−1に、濃尾平野の地下構造調査(文献No.9)で実施された反射法地震探査結果での木曽三川付近の速度モデルを参考に作成した伊勢平野の想定地盤モデルを示す。

表3−2−1 想定地盤モデル

図3−2−3には、想定地盤モデルを用いて計算したレイリー波の基本モードの位相速度分散曲線を示す。

図3−2−3 想定地盤モデルとレイリー波の位相速度分散曲線

図3−2−4には、想定地盤モデルのS波速度・層厚を5%変化させた場合の位相速度の変化量を示す。例えば、第2層のS波速度に対する位相速度の感度分布は下式により計算される。(式3−2−2

微動アレー探査で観測可能な波長は、最大微動計間隔の5倍〜最小微動計間隔の2倍までとした。例えば、3,000m(外側三角形の辺長)−1,500m(内側三角形の辺長)アレーの場合では、周波数0.2Hzにおいて波長3,000m(3,000×0.2Hz×5倍)〜346m(1,500/√3×0.2Hz×2倍)となる。

図3−2−4 位相速度変化図

・最大アレー底辺長3,000mの場合

図3−2−5には、最大アレー底辺長が3,000mの場合の観測可能な波長分布を示す。4回の観測を行う場合、アレーの大きさは3,000−1,500m、750−375m、187.5−93.8m、46.9m−23.4mとなる。この場合は、周波数約0.15Hz(位相速度2,250m/s)までの観測が可能となる。

図3−2−5 探査可能な周波数範囲

・最大アレー底辺長3,500mの場合

図3−2−6には最大アレー底辺長が3,500mの場合の観測可能な波長分布を示す。4回の観測を行う場合、アレーの大きさは3,500−1,750m、875−437.5m、218.8−109.4m、54.7m−27.3mとなる。この場合は、周波数約0.14Hz(位相速度2,370m/s)までの観測が可能となる。

図3−2−6 探査可能な周波数範囲

・最大アレー底辺長4,000mの場合

図3−2−7には最大アレー底辺長が4,000mの場合の観測可能な波長分布を示す。4回の観測を行う場合、アレーの大きさは4,000−2,000m、1,000−500m、250−125m、62.5m−31.3mとなる。この場合は、周波数約0.13Hz(位相速度2,470m/s)までの観測が可能となる。

図3−2−7 探査可能な周波数範囲

図3−2−4で、最下層のS波速度の感度は、周波数0.15Hzでは第5層のS波速度の感度と同程度である。一方、周波数0.14Hz程度では、第5層のS波速度の感度より大きくなり、基盤のS波速度を精度よく求めるには周波数0.14Hz程度までの位相速度を観測する必要があり、それには底辺長3,500mのアレーが必要と考えられることから、本調査では最大アレーの底辺長を3,500mに設定することにした。