伊勢平野には、多数の活断層が確認されている。
主な断層・断層帯の位置は、前述の図1−6−1中に示した。また、主要な活断層・断層帯の一覧表を表1−6−2に示す。
地震基盤となる中・古生界や変成岩類・花崗岩類は、伊勢平野西縁では鈴鹿東縁断層帯、布引山地東縁断層帯を境界として西側に分布している。中・古生界は、この活断層を境に伊勢平野側では地下深部に多様な深度で分布しているものと推定される。
伊勢平野は海岸線沿いに標高0〜10m前後の沖積低地、内陸の標高50〜100m前後の台地・丘陵地に分類される。この境界には、ほぼ南北に桑名断層、四日市断層、千里断層が分布している。各断層は、新第三紀中新統、鮮新統(東海層群)、第四紀更新統を撓曲変位させ丘陵地を形成している。このことから、本調査の対象となる地震基盤(中・古生層)もこの各断層を境に分布深度が変化するとみられる。しかし、各断層の深部における変位量、変位の向き、活動時期、活動性が確認できていないため、どの程度の変位があるかは明確でない。また、断層によって分けられた基盤岩類の各ブロックの変位量と被覆層の変形程度は理論的・定量的に把握されていない。
伊勢湾内には、北西〜南東方向に伊勢湾断層が確認されている。この断層は、他の断層とは異なり、東傾斜の逆断層と推定されている。
(ロ)地質構造
基盤岩類の地質構造は、新生代の地質を拘束して変形させるものとみなし、ここでは扱わない。地質構造は新生代について簡単に触れておく。
中新統は一般に北東から東に緩く傾斜する。しかし伊勢平野西縁の断層近傍では急傾斜になり、それ以東でも緩く不連続に褶曲する。
東海層群は一般傾斜5゜〜15゜で極めて緩く、南北性の不連続で非対称な褶曲により波曲する。しかし断層周辺では垂直に近い傾斜を示すことがある。また平野北端では東海層群は員弁川に沿って向斜構造をなす。
中新統と東海層群のこうした地質構造は、挫屈によって生じた構造よりも拘
束体としての基盤岩類の上下運動によると考えた方が説明しやすい。
図1−6−1 地質概要図
表1−6−1 伊勢平野地質構成表
表1−6−2 伊勢平野周辺主要活断層一覧表