(2)地質

伊勢平野及び周辺の地質は、中・古生代の美濃帯堆積岩類、領家変成岩類、領家花崗岩類、三波川変成岩類、新生代新第三紀中新統、鮮新統、第四紀更新統、完新統が分布する。これらの地質は地形の標高分布にほぼ対応し、西から東に向かって高所で古く、低所で新しい。伊勢平野の基盤をなす主な地質は、中央構造線よりも北に位置し、西南日本内帯と呼ばれるグループに属する。

(イ)中・古生界

中・古生代の美濃帯堆積岩類は養老山地、鈴鹿山脈北部を形成している。固結しており、主に中硬岩〜硬岩に分類される。これらの岩石は花崗岩類の近傍では堅硬なホルンフェルス(接触変成岩)に変成している。

堆積岩類の岩種は、チャートおよび珪質岩、泥質岩、砂岩、塩基性火山岩類、石灰岩などである。

珪質岩と泥質岩には弱い片理が認められることが一般的で、工学的異方性を多少とも有する。また層理あるいは片理に概ね平行な剪断帯もしくは断層がしばしばみられる。

チャート、砂岩は層理に直交した節理や割れ目が多く、浅い深度では良好な硬岩であっても弾性波速度が低いことがある。

(ロ)領家帯および鈴鹿花崗岩

領家帯の地質は変成岩類と花崗岩類で構成され、これらは鈴鹿山脈南部、布引山地、中央構造線以北に分布する。両岩類とも堅硬で中硬岩〜硬岩に分類される。

変成岩類の原岩はチャートおよび珪質岩、泥質岩、砂岩などが主である。変成度は場所により多様である。これらには片麻状ないし片状構造が一般的にみられ、工学的異方性がある。

花崗岩類の岩質は、花崗岩からトーナル岩(石英閃緑岩〜花崗閃緑岩)まで多様で、強から弱の片麻状構造をもつ。中央構造線の近傍では、花崗岩類は特に強く変形しており、マイロナイト(圧砕岩)化する。

鈴鹿花崗岩は領家帯に北側から接する新期の花崗岩で、鈴鹿山脈の主体をなす。この花崗岩はほぼ塊状で、周辺に分布する美濃帯の堆積岩類をホルンフェルス化する。

(ハ)三波川変成岩類

三波川変成岩類は、中央構造線以南に分布する。

変成岩の原岩は、チャートおよび珪質岩、泥質岩、砂岩、塩基性火山岩類などである。この変成岩は片理が発達しており、一般的には中硬岩〜硬岩に分類されるものの片理に沿う剥離性があり、工学的異方性が強い。このため、ときに軟岩程度の強度を示すことがある。片理に平行な断層も普通に認められる。

上記、美濃帯堆積岩類、領家帯花崗岩類・変成岩類、三波川変成岩類は、平野部では新生代の堆積物に覆われ直接確認はできないが、伊勢湾を挟み、愛知県内陸部にも規則的に広く分布している。そのことから、伊勢平野地下深部、伊勢湾深部でも地体構造区分に沿ってそれぞれが分布していると考えられる。

地震基盤はこれら(イ)から(ハ)の地質で構成される。

(二)新生界

新生代堆積物としては、新第三紀中新統、鮮新統、第四紀更新統、完新統が分布する。

新第三紀中新統は、基盤岩類に隣接して伊勢湾側に分布する。これらは基盤岩類とは断層あるいは不整合(アバット)で接する。菰野町の千種層、亀山市西部の鈴鹿層群、久居市西部から松阪市にかけての一志層群、伊勢市西部の高倉層などである。岩種は、泥岩・砂岩を主に薄い礫岩・凝灰岩などで構成され、それらの層厚は、90〜1,200mと見積もられている。岩質は、いずれも軟岩に属する。

新第三紀鮮新統は湖成の奄芸層群で、伊勢平野北部から南部に広く分布しており、伊勢湾に沿った台地・丘陵地を形成する。

奄芸層群は東海層群に属し、濃尾平野より東のものは瀬戸層群、知多半島のものは常滑層群と呼ばれ、これらは一つの堆積盆地(東海湖)に形成された堆積物である。東海層群は中新世最上部から下部更新世と考えられており、奄芸層群は主に鮮新世以後とされている。東海層群は濃尾平野地下深部でもボーリングによって確認されている。

奄芸層群を構成する地質は、砂・礫・粘土で、これらは種々の間隔で互層し、褐炭層や火山灰層を各所に挟在する。全層厚は1,000〜2,000mと見積もられている。硬さは、軟岩から半固結岩まで極めて多様である。

第四紀更新統は伊勢平野北部から南部にかけて、中新統や東海層群を薄く覆い広く分布し、層厚は20m以下である。地質は、礫・砂・粘土から構成され、未固結であるが締まっている。この堆積物は高位〜低位段丘もしくは扇状地を形成しており、海岸付近では東海層群とともに桑名断層、四日市断層、千里断層等により撓曲変位を受けている。

第四紀完新統は富田浜層、四日市港層および現河床堆積物などで、伊勢平野の海岸線及び南部に広く分布している。地質は締まりのゆるい礫、砂や軟らかい粘土などである。これらの堆積物は現在の主要河川の河口部で厚い傾向があり、層厚は10〜25m程度である。この他伊勢平野西縁山麓には、層厚が数m以下の薄い崖錐堆積物が点在する。