地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、「南海トラフの地震の長期評価」において、南海トラフ沿いに発生する地震について、長期的な観点で地震発生の可能性等について評価を行い、東南海地震の今後30年以内の発生確率が50%程度であること、評価の結果を踏まえて、強震動等の予測精度向上のため、当該地域について調査観測体制の強化が望まれることを提示した。また、地震調査研究推進本部地震調査委員会強震動評価部会(2001)は、「南海トラフの地震を想定した強震動評価手法について(中間報告)」において、同地震の震源特性を用いて県庁所在地等の震度を試算した。それによれば、津市において、想定東南海地震発生時に震度6弱相当以上となることが提示されている。
これらのことから、伊勢平野は、今後一定期間に強震動の影響を受ける可能性が高い地域であると判断できる。
1995年に発生した兵庫県南部地震において出現した、いわゆる「震災の帯」は、伏在断層に伴う基盤岩上面の段差構造によって、地震の揺れが特定の箇所に集中したり、増幅して大きくなった結果、被害の集中する地域が生じたものと考えられている。
伊勢平野は、西側を鈴鹿東縁断層帯、布引山地東縁断層帯によって画されており、これらの活断層の西側では基盤岩類(中古生層や花崗岩等)が地表付近に露出する一方で、東側では基盤岩の深度が急激に深くなっていることが予想される。
このように、伊勢平野は神戸地区と地下構造が非常に良く似た環境にあり、しかも重力探査データの解析から想定される同平野の基盤岩(中古生層又は花崗岩等)上面の深度は、最深部で2,000m以深であると予想されている。このため、地表への地震波の伝播過程において、地下構造の効果により地震動が強くなる地域が存在する可能性があり、同平野の地下構造を精度よく把握することが、地震防災上において極めて重要と考える。
しかしながら、強震動予測のために必要となる伊勢平野の地下構造に関するデータはじゅうぶんに蓄積されていないのが現状である。
本調査では、以上のことを考慮した上で、本県内の人口及び産業施設等が集中する地域である伊勢平野の地表から地震基盤までの3次元的地下構造の概要を明らかにすることによって、地震発生時の強震動の予測等を行うための基礎資料を取得し、三重県の地震防災に資することを目的として実施した。