5−4−1 物性値の推定方法の概要

強震動予測に必要な物性値はP波速度(Vp),S波速度(Vs),密度(ρ)の3種類であるがこのうち広域にまた多量の情報が得られている物性値は,反射法地震探査によるP波速度である。そこで本調査では,まずP波速度を推定して,これをもとにS波速度と密度を推定する手順を採用した。具体的な推定手順と,これに関連する本年度の検討事項は以下のとおりである。

@P波速度は,堆積年代(地質年代),埋没深度(拘束圧),堆積環境の3つの要因を用いて推定できるものと考えられる。この検討に用いるデータは,ボーリング調査との層序対比により堆積年代が明らかにされているP波反射法探査断面と,この探査で得られた速度解析結果である。これまで,Faustの式(1951)を元にした回帰式でこの検討を行ってきたが,推定精度が上がらず問題が残っていた。本年度は,京都盆地に比べると比較的堆積構造が単純な大阪平野のデータを用いて回帰式の選択をまず行い,この結果を用いて京都盆地全域を再検討した。

AS波速度および密度は,P波速度と埋没深度からGassmannの式を用いて推定を行っている。この手法は,大阪平野の深層ボーリングの検層結果より求めたものであるが,京都盆地においてもKD−1孔,KD−2孔で速度・密度検層を行い検討した結果,ほぼ問題なく京都盆地でも適用できることが確認されている。ただし,KD−1孔,KD−2孔は新期の堆積層厚は200m程度と薄く,堆積年代も最深部でMa3(85万年前)のため充分な検討ができているとは言えなかった。本年度実施したKD−0孔は,新期堆積層層厚が695mあり,また658mで福田火山灰(175万年前)が確認できたため,S波速度および密度の推定方法についても充分な検討を行うことができた。