@波動が減衰して良好な記録が得られにくい。
A地層が傾斜している場合,波動が屈折して地盤の真の弾性波速度が得られない。
などの欠点がある。
今回の調査においてはこれらの欠点を補うため,DSI(Dipole Share sonic Imager)と呼ばれる孔中発震・孔中受振の測定法で実施した。この方法では,弾性波を発生させる発震器とその振動を感知する受振器が同じセンサーゾンデに組み込まれており,音波を用いて発震させ,ゾンデに約15cm間隔で直列された8個の受振器で各受振器間における到達時間差を検出し,孔壁を伝わる弾性波速度を求めることができる。
DSIゾンデの諸元は,以下のとおりである。
・ゾンデ径 9.2cm
・使用可能最小孔径 13.9cm
・使用可能最大孔径 45.7cm
・ゾンデ長 15.5m
・A/D変換ダイナミックレンジ 7.2dB
・サンプリング周波数 30.58Hz〜100,000Hz
・発振周波数 8〜30kHz(monopole震源)
80Hz〜5kHz(dipole 震源)
・耐用最高温度 175℃
・耐用最大圧力 138MPa
・震源受振点間距離 2.74m(最も近い受振点とmonopole震源)
3.35m(最も近い受振点と近い方のdipole震源)
3.51m (最も近い受振点と遠い方のdipole震源)
DSIの中心部分は,図3−1のように大きく分けて発震部と受振部,その両者を切り離す役割のアイソレート・ジョイントからなる。
発震部にはP波を発生させるmonopole発振子1つと,S波を発生させる逆方向にセットされた2つのdipole 発振子が組み込まれている。Monopole 発振子は圧電素子に電流を流すことにより比較的周波数が高く指向性のない音波を発生させる。Dipole 発振子は孔中でピストンのように振る舞い,孔内の圧力の一方を増加させ,他方を減少させる。このため,孔壁を屈曲させながら伝播するS波を発生することになる。図3−2にdipole震源がS波を発生させる原理を示す。
図3−1 DSIゾンデの外形図
図3−2 ダイポール震源の原理
受振部は,15.24cm(6インチ)毎にセットした8個の受振器(ハイドロフォン)からなる。得られた波形間のコヒーレンスのピークを追跡することで,各区間におけるスローネス(速度の逆数)をほぼリアルタイムで測定することができる。図3−3に,レシーバーアレーによる速度解析の概念図と,センブランス(コヒーレンス)コンターによるスローネスの決定の仕組みを図示する。
図3−3 データ解析の原理