3−2−1 PS検層(DSI)

PS検層は,ボーリング孔を利用して弾性波速度(P波・S波)を直接測定するものであり,発震・受振の方式により,ダウンホール法,アップホール法など,いくつか測定法がある。これらのうち最もよく用いられるのが,震源を地表に設置し,孔井内の孔壁に密着させた受振器でその波動を記録するダウンホール式のPS検層である。震源としては,P波検層では地表面を直接かあるいは地表に設置した鉄板等をハンマーで鉛直に打撃する方法,S波検層では地表に設置した角材をハンマーで水平に打撃する方法(板たたき法)などが用いられる。この方式では,受振器を所定の深度に設置し,P波・S波の発震を行って観測波を記録して,受振器の深度を変えて同じ測定を繰り返すことになる。得られた観測記録よりP波・S波の初動を読み取って走時曲線を作成し,この走時曲線の傾きから地盤の弾性波速度が得られる。しかし,この方式では震源を地表に設置しているため,長尺のボーリングでは,

@波動が減衰して良好な記録が得られにくい。

A地層が傾斜している場合,波動が屈折して地盤の真の弾性波速度が得られない。

などの欠点がある。

今回の調査においてはこれらの欠点を補うため,DSI(Dipole Share sonic Imager)と呼ばれる孔中発震・孔中受振の測定法で実施した。この方法では,弾性波を発生させる発震器とその振動を感知する受振器が同じセンサーゾンデに組み込まれており,音波を用いて発震させ,ゾンデに約15cm間隔で直列された8個の受振器で各受振器間における到達時間差を検出し,孔壁を伝わる弾性波速度を求めることができる。

DSIゾンデの諸元は,以下のとおりである。

・ゾンデ径             9.2cm

・使用可能最小孔径         13.9cm

・使用可能最大孔径         45.7cm

・ゾンデ長             15.5m

・A/D変換ダイナミックレンジ     7.2dB

・サンプリング周波数        30.58Hz〜100,000Hz

・発振周波数            8〜30kHz(monopole震源)

                   80Hz〜5kHz(dipole 震源)

・耐用最高温度           175℃

・耐用最大圧力 138MPa

・震源受振点間距離         2.74m(最も近い受振点とmonopole震源)

3.35m(最も近い受振点と近い方のdipole震源)

3.51m (最も近い受振点と遠い方のdipole震源)

DSIの中心部分は,図3−1のように大きく分けて発震部と受振部,その両者を切り離す役割のアイソレート・ジョイントからなる。

発震部にはP波を発生させるmonopole発振子1つと,S波を発生させる逆方向にセットされた2つのdipole 発振子が組み込まれている。Monopole 発振子は圧電素子に電流を流すことにより比較的周波数が高く指向性のない音波を発生させる。Dipole 発振子は孔中でピストンのように振る舞い,孔内の圧力の一方を増加させ,他方を減少させる。このため,孔壁を屈曲させながら伝播するS波を発生することになる。図3−2にdipole震源がS波を発生させる原理を示す。

図3−1 DSIゾンデの外形図

図3−2 ダイポール震源の原理

受振部は,15.24cm(6インチ)毎にセットした8個の受振器(ハイドロフォン)からなる。得られた波形間のコヒーレンスのピークを追跡することで,各区間におけるスローネス(速度の逆数)をほぼリアルタイムで測定することができる。図3−3に,レシーバーアレーによる速度解析の概念図と,センブランス(コヒーレンス)コンターによるスローネスの決定の仕組みを図示する。

図3−3 データ解析の原理