(2)花粉化石分析

堆積物は,種子植物やシダ植物などから放出され堆積してできた花粉あるいは胞子の化石を含むことがある。花粉および胞子の形態は個々の植物群により特異的であるので,それから母植物群を知ることができる。これら植物群の質的あるいは量的構成を知ることにより,過去の植生を復元し,堆積当時の気候や古環境の推定が可能となる。

本孔では,肉眼観察によりコアの色調から海成粘土と推定された5枚の粘土層のうち,最上位にあたる深度101.82〜106.00mの粘土層の地質層準に関する情報を得るため,ほぼ一定間隔で採取した5試料について,花粉分析を実施した。

@前処理

・2〜3g程度の試料を,10%水酸化カリウム水溶液中において90℃で10分間処理して腐植物を除去し,2回水洗する。網に通して大きな粒子を除去し,さらに傾斜法によって粗い無機粒子を除く。

・50%フッ酸で20分間処理し,細かい無機物を溶解除去する。水洗,酢酸による脱水の後,アセトリシス処理(無水酢酸:濃硫酸=9:1を混合した溶液による処理,90℃で2分)を行い,残っている有機物,花粉の内容物,付着物を除く。

・水洗した後,グリセリンに浸し保存する。

・グリセリンに浸した化石花粉集合標本を含む溶液を適度な濃度に調整し,スライドグラス上に1滴たらしサフラニン−Oで染色後,カバーグラスをかけて検鏡のためのプレパラートを作成する。

A花粉化石組成

光学顕微鏡でプレパラート全面を観察し,花粉および胞子を同定する。樹木花粉が200個を超えなかった場合はさらにもう1枚プレパラートを作成し,計数を行う。

表2−3 花粉分析試料一覧