9−4−6 まとめおよび今後の展望
今回作成した地盤モデルを用いた3次元シミュレーションでは,全体として観測記録に良く対応した結果が得られた。概略的には地盤モデルの妥当性が検証されたものと考えられる。一方,シミュレーションの結果と観測記録の詳細比較では,主に後続波の部分における計算結果と観測記録の対応に問題が残った。こうした問題点は1Hz前後の波で見られることから,表層地盤の影響が関与していることが予想される。しかしながら,表層地盤の影響以外にも盆地端部の3次元的な基盤形状なども後続波の発生・伝播には関与しているものと考えられる。このため,表層地盤の影響評価とともに,後続波の発生・伝播の機構に関わるこれらの地下構造に関しても検討を加えることが必要と思われる。今回の検討ではマグニチュードが4程度の小地震による観測記録をシミュレーションとの比較の対象としたため,地盤モデルの検証は比較的狭い周波数帯域に関するものとなっている。この点に関しては,鳥取県西部地震,芸予地震など遠地ではあるがマグニチュードが大きく,低い周波数成分に富む地震の観測記録が得られていることが期待でき,これらを利用することにより,広範な周波数範囲に対する地盤モデルの検証が可能となる。