図9−19、,図9−20に地表面における振幅分布の時間経過を示す。震源から放射された波動が,岩盤内ではほぼ同心円状に伝播していくのに対して,盆地内では堆積層の影響を受け,複雑な波面を形成している。波面伝播の特徴として
1) 堆積層のある盆地内部では波動の伝播が遅れて,波面が震源側に屈曲する。深い基盤構造をもつ巨椋池付近では特に大きく屈曲している。
2) 作成したモデルには東山の両端で,花山・勧修寺断層と花折・桃山断層には逆断層による落差300m程の比較的大きな落差を与えた。このため,断層近傍でそれぞれ2000年5月20日と2000年5月21日の地震により,盆地内を伝播する波と基盤内を迂回した波が干渉したと思われる震幅の大きい部分が見られる。
3) また宇治川直下付近では探査結果をもとに150m程度の基盤岩の落差を持たせており,この近辺ではこの落差の影響によると思われる後続波が形成されている。
ことなどが挙げられる。
A 波形比較
各観測点各成分に関する計算と観測の波形比較を図9−21および図9−22に示す。振幅は観測・計算共通の成分(RKSのNSおよびSKYのEW)で規準化している。計算条件より観測・計算波形とも1Hzのローパスフィルターをかけてある。時間軸に関しては,S波主要動を合わせる形で調整した。
地震の規模が小さいこと,観測記録が加速度記録であることから,低い周波数成分の精度にに関して厳しい条件であるものの,全体的な傾向に関しては,計算と観測とで比較的良く対応した結果が得られているものと考えられる。
図9−23、図9−24、図9−25、図9−26に周波数範囲をやや広げた詳細な計算結果と観測記録の比較を示す。振幅は観測値の三成分の最大値で規準化し,計算値に関しては計算結果の三成分と観測値三成分の平均的な振幅比で規準化してプロットしている。
主要動の部分に関しては,どの地点に関しても観測波形と良い対応を示すものの,
1) 後続波の部分で,観測に比較して計算結果の方が少ない場合がやや目立つ。
2) HNBのEW成分のように観測されていない後続波が計算されている場合もある。
などの問題点が挙げられる。