(1)等価半径
SPAC法に適用出来るアレイは基本的に中心に1個の観測点及び円周上に分布する多数の観測点からなる円形アレイである。円の半径rをアレイ半径と言う。一番簡単なアレイは,次の図に示すような中心点および円周上に等間隔に配置する3点からなる4点正三角形アレイである。解析は中心点4と三角形頂点1,2,3で同時に観測したデータを用いて(4,1),(4,2)および(4,3)間の相関係数の方位平均から位相速度を求める。
微動は時間的かつ空間的に定常なら,相関係数の方位平均は観測点間の距離のみに依存し,観測点の位置とは無関係となる。ゆえに,図6−1のように,三角形の頂点1,2,3のみからなる三角形アレイは三角形底辺長を半径とする円状アレイに相当することになる。同様に,例えば7点2重同心正三角形の場合,観測点間の距離は5種類あるので,5個の半径異なる円形アレイに相当する。本報告書には,アレイ中心点と他の観測点間の距離を半径と称し,中心点以外の各観測点間の距離を等価半径と称する。特に区別する必要がない場合,両者共に半径と称する。
図6−1 SPAC法における等価半径の概念
(2)基本区間長
微動の観測データからスペクトルを推定するとき,先ず一定のデータ長Lで観測データを分割し,各部分のスペクトルを推定する。各部分のスペクトルの平均値をスペクトルの推定量として用いる。ここで,Lを基本区間長と言う。
このような処理の目的はスペクトルの推定精度を向上させることである。FFT法を例とすると,全データを1個の区間として使用すれば,スペクトルの推定誤差はデータの長さと関係なく100%となる。しかし,データを100個の区間に分けて各区間のスペクトルの平均値を用いると,推定誤差は1/√(100)=0.1,つまり10%になる。