5−3 検層結果

図5−3に各検層結果とボーリング結果を対比させたものを、総合検層柱状図として示す。各測定値の特徴あるいは傾向は以下のとおりである。

<P波速度(Vp)、S波速度(Vs)>

@地表から深度198mまでが段丘層および大阪層群に属する礫質土優勢の堆積層に相当し,下部ほど速度が速くなる傾向が見られる。その傾向は礫質土では深度140m付近でわずかに異なり,深度140m以浅ではVp =2000〜2200 m/sec,Vs=500〜700m/sec,それより以深ではVp =2300〜2400 m/sec,Vs=800〜850m/secとなる。また,深度140m以深においては上位に比べて粘土層がやや厚く挟まれる。粘土層の速度は層内においても変化する傾向があり,1枚の粘土の形成過程における堆積環境の変化に対応した粒度組成の変化が関係している可能性があると考えられる。しかし,粘土層の速度は堆積層全体を通じておおむね一定して増加し,各粘土層の中央付近が示す最低速度値は,Vp=1700〜1800m/sec,Vs=400〜500m/secとなる。

A深度198m以深の基盤岩においては岩種あるいは亀裂の発達程度の違いにより速度が異なる。深度198m〜233m付近はチャートであり,下部ほど速くなる傾向が見られるが,岩質に明瞭な差異が見られず,むしろ亀裂の発達程度による影響と考えられる。おおむねの速度はVp=3700〜4100m/sec,Vs=1900〜2200m/secを示す。深度198m以深の頁岩部では,深度290m付近を境として上位は下位に比べてそれぞれの速度は速い傾向にあり,上位ではVp=4800〜5400m/sec,Vs=2500〜3000m/sec を示し,下位に比べて速度のばらつきは小さい。一方,下位の部分は粘土化した破砕部を所々にはさみ,上位に比べて全体的な岩質は劣化する。それぞれの速度は,Vp=4000〜5400m/sec,Vs=1800〜3000m/sec を示し,速度の最高値は上位とほぼ同じであり,亀裂の少ない硬い岩質の部分ではほぼ同じ物性値を示す。

<密度(γ)>

@表層から深度約10mにおいては、γ=1.8g/cm3から2.3g/cm3 に漸増する傾向が認められる。

A深度198m以浅の堆積層においては,礫質土の部分では下部ほどわずかに大きくなる傾向が見られ,おおむねγ=2.25〜2.35g/cm3 を示す。しかし,粘土の部分では深度方向に対してほとんど増加せずγ=2.1g/cm3 である。

B深度198m以深の基盤岩においては,若干の乱れはあるものの密度値は比較的一定しており,深度198〜233mのチャート部分でγ=2.55g/cm3程度,深度230m以深の頁岩部分ではγ=2.7g/cm3 程度を示す。局部的に密度値の低下する部分は,破砕作用によって生じた粘土化した部分に対応する。