基盤岩の上位に堆積する大阪層群の地質層序(表4−5参照)を特定するおもな鍵層は火山灰と海成粘土である。KD−2孔においては,肉眼観察による色調判定と含有化石の確認より3枚の海成粘土層が推定された。これらのうち,最上位の粘土層は花粉分析結果より,温暖期における堆積を指示するとともに,コナラ属アカガシ亜属が優占的に出現する特徴を有することより,Ma9相当層準に対比される可能性が大きい。また,平成10年度に実施した反射法探査[堀川−巨椋池断面]で得られた反射断面では,この粘土層はKD−1孔の最上位に確認された貝殻片や海棲珪藻種を含む海成粘土層(深度63.03〜68.70m)に連続すると考えられる。したがって,KD−1およびKD−2地点において確認された最上位の海成粘土層はMa9相当層準であると考えられる。
また,KD−2地点で確認されたカキ化石を含む2枚の海成粘土層については,この地点で明確な火山灰層が確認されなかったことより,本年度の調査結果のみでは地質層準を特定できる地質情報は得られなかった。しかし,平成11年度に実施したKD−1地点においては,誓願寺―栂火山灰(深度132.93〜133.21m),八丁池T火山灰(深度140.73〜140.90m),アズキ火山灰(深度207.36〜207.88m)の3枚が検出され,Ma3〜Ma6の海成粘土層あるいはその相当層準が対比されている。したがって,上述した2地点間におけるMa9層準との層位関係および反射断面[堀川−巨椋池断面]における反射面の連続性より,KD−2孔における下位2枚の海成粘土層はMa6とMa5に対比できると考えられる。
さらに,火山灰分析で検出された「カスリ火山灰」に対比できる可能性のある火山灰降灰層準の層位関係も,上記した地質層序と矛盾しない結果となっている。
以上より,KD−2地点における大阪層群の鍵層はつぎのようにまとめられ,その地質層序は図4−5の総合地質柱状図に示すとおりである。
深度 87.30〜 88.60m : Ma9
深度136.10〜136.20m : カスリ火山灰降灰層準?
深度155.80〜160.07m : Ma6
深度182.21〜190.37m : Ma5
一方,粘土層を除く地層は全層を通じて淘汰の悪い礫よりなる粘土混じり砂礫が大部分を占め,砂礫・砂・粘土互層よりなるKD−1地点の層相とは対照的である。その要因としては,KD−2地点がKD−1地点に比べて礫の供給山地により近く,海域が湾入してきた時期を除いて,常に扇状地性の堆積物が供給されていた堆積環境にあったと推定される。また,各海成粘土層間の砂礫層の厚さも山地に近いKD−2地点では,KD−1地点に比べて厚く堆積している。
なお,大阪層群の上位にあると推定される段丘堆積層は,前述したように大阪層群との境界が明確でないが,KD−1とKD−2地点間における各海成粘土間の層厚変化をもとに推定すると,深度48m付近が段丘堆積層の基底付近にあたる可能性がある。