表に示すように,全般に花粉含有量が少なく統計的な扱いはできない。しかし,P1,P2とも常緑のコナラ属アカガシ亜属が目立って産出し,最も多くの花粉が含まれていたP1では,アカメガシワ属,クロウメモドキ科,ハグロソウ属という温暖な気候を好む植物を含む花粉がわずかながら産出している。したがって,これらの粘土試料は温暖な気候下にあったことが示唆される。一方,時代を特徴付ける花粉は第三紀要素のフウ属やスギ以外のスギ科などは産出しておらず,中期更新世以降の可能性が高い。
コナラ属アカガシ亜属の優占で特徴付けられる温暖期は,大阪湾のボーリング試料では中期更新世以降,Ma6,Ma9,Ma12,Ma13で知られている。花粉含有量が少なく,コナラ属アカガシ亜属の優占が確認された試料も少ないという問題はあるが,地質層準的な位置から考えると,この粘土層はMa9に対比されると考えるのがもっとも矛盾がない。