イ.表層の速度および層厚は変化が激しいため,表層を通過する時間は発震・受震点により様々である。これをできるだけ一定にする。
ロ.表層と第2層との速度差は一般に大きいため,解析上仮定している直線波線から大きく外れる。これを補償する。
ハ.震源・受震点の標高差による影響を除去する。
などである。実際には次の3段階の補正を実施した。
A.表層静補正
一般的には屈折法により表層をはぎ取る方法が用いられるが,特に,ミラ−ジュ的な速度変化を示すような速度構造地盤では,必ずしも精度の高い補正値を得られるとは限らない。今回は,「屈折波を用いたトモグラフィ−」により静補正値を算出し,表層に起因する乱れを補正した。この処理の手順は次の通りである。
イ. 観測波形よりP波の初動走時を読み取る。
ロ. 差分格子点に適当な初期速度分布値を与える。
ハ. アイコナ−ル法により,ある発震点で起震した場合の各格子点の初動走時を計算する。
ニ. 初動走時分布をもとに波線を求める。
ホ. 各波線の観測走時と計算走時の比を修正係数とし,波線周辺の格子点に記憶する。
ヘ. ハ.〜ホ.を全震源点についておこなう。
ト. 格子に配られた修正係数をもとに新たな速度分布を算出する。
チ. ハ.〜ト.を収束するまで繰り返す。
図2−13に屈折波トモグラフィーにより求めた表層部P波速度分布を示す。
B.残留靜補正
NMO補正後に,最大値を7msecに制限した自動残留静補正解析を行った。
C.CMPアンサンブル内での標高静補正
NMO補正前に,各アンサンブルごとにその平均標高までの標高差補正を行った。なお,補正速度は1550m/secを用いた。
D.重合後標高補正
マイグレ−ション,深度変換後に各CMPの平均から基準標高(丸太町測線 GL.+100m,五条測線 GL.+150m)までの標高補正を行った。また,時間断面図のプロットの際も,地表平均標高(floating datum)から基準標高までを,1550m/secの速度を仮定して,標高補正を実施した。