6−4−3 データ処理

P波・S波ともデータ処理の流れは同じである。実施した処理は次の通りである。

@T.Bの補正

起震位置の変更などによりTime Break(ショットマーク)が異なる場合にモニター記録を用いて各深度での起震時間の補正を行った。

A波形処理

各記録にプレフィルターをかけ、プレフィルターの位相をミニマム位相に戻す処理を行った。また、初動に対し後続波形の振幅は弱いため、自動振幅補償(AGC)および以下に示すデコンボリューション処理を行った。

・プレフィルター:P波・・・8〜80Hz バターワース

          S波・・・4〜60Hz バターワース

・位相補償:インパルスにプレフィルター処理を行い、この波形をミニマムフェーズに戻すフィルターを求め、プレフィルター処理後の観測波形にかけた。

・デコンボリューション:P波・・・ゲート長400msec、フィルター長80msec

                  ホワイトニング・デコンボリューション

             S波・・・ゲート長800msec、フィルター長100msec

                  ホワイトニング・デコンボリューション

B方位補正(S波のみ)

S波については、直交する2成分で観測しているが、ツールの上げ下げの際、方位が各深度で異なることが多い。このため水平2成分を用いて、最大振幅を示す方向をリサージュ波形から求め、この方向で合成した波形をS波の記録とした。

C初動読み取り

初動読み取りは生の観測波形で行った。また、読み取りの結果は、これを用いて水平成層構造を仮定した速度分布を作成し、DSIによる結果と極端に異ならないことを確認した。

なおDSIは測定間隔が非常に細かく、速度に局所的な大きい揺らぎを持つため、DSIの結果に若干の平滑化を掛けて比較している。

D上昇波・下降波の分離

反射法探査では上昇波のみしか存在しないが、VSP探査においては受震器が地中にあるため、地表などからの多重反射波による下降波も観測される。このような下降波は解析に不必要であるため、上昇波のみを抽出する必要がある。上昇波と下降波の分離のために上記までで得られた波形にτ−p変換を施し上昇波に相当する成分のみを取り出した。

ENMO補正・タイムシフト

震源点と受震点が反射の軸上に並ぶようにNMO補正を行い、また、受震点が地表面上にあるように観測記録を移動(タイムシフト)した。これにより、平行層構造であれば反射波は各深度の記録ごとで同一時刻に地表に返るものとして表される。図6−5にNMO補正・タイムシフトの概念図を示す。

F静補正

静補正とは反射法探査で行う処理で、地表付近の速度や標高差に起因する誤差を取り除くことをいう。VSP探査のみでは通常行う必要はないが、反射法探査による時間断面との対比を行うためには静補正を必要とする場合がある。反射法探査測線が道路上であるのに対しVSP探査地点はグラウンド上であるため静補正を施した。補正量は反射法探査の静補正量を参考に決定した。

G深度変換

深度変換には初動から求められる区間速度を用いた。