(2)微化石総合分析および珪藻化石分析

これらの分析はボーリングコア試料のうちの18枚の粘土層を対象に行った。分析試料は表5−4の微化石分析試料一覧にまとめるとおりである。

以下に、各粘土層の分析結果をまとめる。なお、分析結果の詳細は表5−5の微化石分析総括表に示す。

表5−4 微化石分析試料一覧表

表5−5 微化石分析結果総括表

@G.L.−37.03〜−41.06m

有孔虫や貝形虫、ウニなどの海生微化石や火山ガラスは認められず、雲母や植物片が極少量産出するのみであった。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

このような産出の特徴は、珪藻群集の生産、砕屑粒子の流入、珪藻の保存などに関連した堆積盆地の安定度を示しており、当層では砂分がやや多く含まれることから堆積速度が速かったものと考えられる。

堆積環境は、淡水域もしくは陸域が考えられる。

AG.L.−42.36〜−49.00m

上位層と同様に、海生微化石や火山ガラスは認められず、雲母・植物片が極少量産出するのみであった。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

堆積環境の詳細は不明である。

BG.L.−56.30〜−60.18m

上位層と同様に、海生微化石や火山ガラスは認められず、雲母・植物片が極少量産出するのみであった。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

堆積環境の詳細は不明である。

CG.L.−63.03〜−68.70m

上位層と同様に、海生微化石や火山ガラスは認められなかったが、甲殻類の殻などを形成するキチン質の殻が上部で認められた。また下部では、種子の殻を含む植物片がやや多産している。

珪藻化石は、海水棲珪藻のNitzschia granulataやDiploneis bombusと淡水棲珪藻のCocconeis sp.やMelosira sp.などが混在した。

堆積環境は、汽水域に特徴的な珪藻化石が全く産出しなかったので,汽水域であったと断定はできないが,海水と淡水が混じり合う汽水域に近い状況であったと考えられる。

DG.L.−73.96〜−76.30m

上位層と同様に、海生微化石や火山ガラスは認められず、雲母・植物片が極少量産出するのみであった。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

堆積環境の詳細は不明である。

EG.L.−77.95〜−84.97m

海生微化石や火山ガラスは認められず、雲母が極少量産出したのみであった。その他には、重鉱物のうち角閃石がやや多く認められた。また珪藻化石は、淡水棲珪藻のMelosira sp.が極少量産出した。

堆積環境は、淡水域にあったものと考えられる。

FG.L.−93.15〜−100.81m

海生微化石や火山ガラスは認められず、雲母のほか植物片が下部で極少量産出したのみであった。また珪藻化石は、上部で淡水棲珪藻のMelosira sp.やStephanodiscus sp.が少量産出した。

堆積環境は、淡水域にあったものと考えられる。

GG.L.−119.72〜−121.91m

海生微化石や火山ガラスは認められず、雲母が極少量みられるほか、植物片がやや多産した。また珪藻化石は、上部で淡水棲珪藻のMelosira sp.やStephanodiscus sp.、Coscinodiscus subtilisが少量産出した。

堆積環境は、淡水域にあったものと考えられる。

HG.L.−123.33〜−128.80m

海生微化石や火山ガラスは認められず雲母や植物片、黄鉄鉱が少量産出した。このうち黄鉄鉱は硫化鉄の酸化により生成した単体硫黄と、未酸化の硫化鉄とが反応して生じると考えられており、海域の堆積環境にあったことを示唆するものである。

珪藻化石は、淡水棲珪藻のMelosira sp.やStephanodiscus sp.が少量産出した。

以上より、珪藻化石では淡水棲珪藻のみの産出であったが、黄鉄鉱の産出により、汽水域に近い堆積環境にあったものと考えられる。

IG.L.−130.06〜−132.20m

雲母が極少量産出したのみで他の微化石は認められなかった。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

堆積環境の詳細は不明である。

JG.L.−141.35〜−154.00m

海生微化石や火山ガラスは認められなかったが、雲母や植物片の他に黄鉄鉱が産出しており、このうちG.L.−146.0および−150.0mで比較的多産した。また、G.L.−146.0,−150.0mではキチン質の殻も産出している。

珪藻化石は、淡水棲珪藻のMelosira sp.が産出したのみである。

以上より、珪藻化石では淡水棲珪藻のみの産出であったが黄鉄鉱の産出により、汽水域に近い堆積環境にあったものと考えられる。

KG.L.−155.70〜−158.00m

雲母および植物片が少量産出したのみで他の微化石は認められなかった。

したがって、珪藻化石分析は実施していないが、ボーリングコア観察で淡水域の指標となる藍鉄鉱がみられることから、淡水域の堆積環境にあったものと考えられる。

LG.L.−172.56〜−177.70m

海生微化石や火山ガラスは認められなかったが、雲母や植物片の他に黄鉄鉱が極少量産出した。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

したがって、珪藻化石の産出は認められなかったものの黄鉄鉱の産出より、汽水域に近い堆積環境にあった可能性もある。

MG.L.−180.69〜−182.00m

雲母が極少量産出したのみで他の微化石は認められなかった。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

堆積環境の詳細は不明である。

NG.L.−198.77〜−202.74m

雲母および植物片が極少量産出したのみで、他の微化石は認められなかった。また珪藻化石は、淡水棲珪藻のMelosira sp.が極少量産出した。

堆積環境は、淡水域にあったものと考えられる。

OG.L.−202.94〜−204.86m

雲母および植物片が少量産出したのみで他の微化石は認められなかった。

堆積環境の詳細は不明である。

PG.L.−206.50〜−213.51m

雲母および植物片が少量産出したのみであるが、キチン質の殻がG.L.−210.0mで認められた。また珪藻化石は、海水棲珪藻のDiploneis smithiiやNitzschia granulataが少量産出した。

堆積環境は、海域にあったものと考えられる。

QG.L.−214.34〜−217.57m

雲母および植物片が極少量産出したのみで、他の微化石は認められなかった。また、珪藻殻は全く産出しなかった。

堆積環境の詳細は不明である。