4−3 重力異常の傾向分析

前節の補正方法の適用性を確認するため、コンパイル重力データだけを用いた場合と収集した全デ−タを用いた場合びついて単純ブーゲー異常コンターを描き、図4−3に示す。同図のコンタ−はクリッギング補間を用いて描いている。異なったデータセットの中間付近でコンターが大きく曲がるなどといった、デ−タの違いによる影響は強くは見られない。次に、地形補正を含めて両者を図4−4に示す。図4−2からデータ間の差異が懸念されたが、結果的に図4−3から大きな変化の見られない結果が得られた。

 

図4−3および図4−4では、特に北部で東西の傾向が強く見られる。基盤構造の把握という目的からは長波長のノイズと考えられるこうした広域の傾向を除去するため、各測定点の座標とブ−ゲ−異常値を用い、最小自乗法により1次の傾向面を求めた。この結果、傾斜の方向E31.85N,勾配5.69mgal/kmの平面が得られた。なお、ここでは京都盆地を中心とした地域のブーゲー異常データを扱っているため、全体の傾向には盆地構造によるブーゲー異常が含まれている。したがって、こうした解析に盆地内の測定点まで含めると関心を持っている盆地構造の影響までノイズとして扱ってしまいかねない。そのため、傾向面の算出は盆地内の測定点(標高100m未満)を除いて行った。

図4−5に、この傾向面を除去した後の重力のブ−ゲ−異常図を示す。図4−4に比較して盆地縁辺の形状が明らかとなっている。

一方、図4−5を詳細に見ると、伏見の山地や比叡山南西の山地で岩盤が露出していると思われる地域で低い重力異常が見られるなど、琵琶湖を中心とした低重力異常域の影響などが未だ残っていることがわかる。

図4−3 コンパイル重力データと追加した重力データの単純ブーゲー異常の比較

図4−4 コンパイル重力データと追加した重力データの地形補正後ブーゲー異常の比較

図4−5 1次の傾向面の影響を除去したブーゲー異常分布(密度2.65g/cm

ブーゲー異常の傾向面に関する問題点に関して若干の検討を加えた。図4−5は、大きな傾向を平面近似して求めたものであるが、琵琶湖を中心とした低重力異常域、宇治市の山地を中心とする工重力異常域といったややローカルな傾向が重なって京都盆地内の重力異常の傾向を形成しているものと考えられる。こうした傾向を表現するには、平面近似では十分とは考えにくい。そのために、広域の傾向除去が不十分となり、図4−5に問題を残したものと思われる。

高次の曲面で広域の傾向を求めた結果を図4−6に示す。図4−6は5次曲面で傾向面を表現しているが、これ以上は次数を上げてもコンターの傾向に変化があまり見られなくなる。琵琶湖の低重力域と宇治の高重力域が分離されている一方、北山、西山では盆地縁辺に沿った傾向面が抽出されている。図4−7に5次の傾向面を除去したブーゲー異常を示す。盆地東縁に関しては改善されているが、北縁では盆地端部が見えなくなってしまっている。

ややローカルな傾向の評価を問題とする場合は、ここで扱っている範囲のデータで評価する必要があるため、平面を得た場合のように測定点を限定する方法も取りにくい。一つの方法としては盆地構造の概略からモデル計算によって求めた盆地の影響を観測地から差し引いた後、高次の傾向面を求めることが考えられる。これには、総合解析の結果を待つ必要があるものと考えられる。こうしたことから、総合解析には平面近似の傾向面を除去した後のブ−ゲ−異常デ−タを用いるものとした。

図4−6 ブーゲー異常の5次曲面による広域傾向面

図4−7 5次の傾向面除去後のブーゲー異常コンター