地表から1.5秒付近までは、密で比較的連続性の良い反射面が確認できる。1.5秒付近までの浅部構造は、測線の東端から受振点No.360付近までは、西側へ傾斜している。No.360から西側へはほぼ平坦あるいは緩い東傾斜であることが確認できる。このような特徴的な様相をもつイベントは上総層群の反射面であると考えられる。なお、反射面のコントラストがよい地域(RP.100〜200、300〜460)と悪い地域(反射波が乱れている地域)があるが、これは、測線のノイズ状況(図8)および発震台数(Appendix−3)と相関があり、人工ノイズ(交通ノイズ)によって影響を受けた結果と考えられる。
Appendix−3(表3−1−1、表3−1−2、表3−1−3、表3−1−4、表3−1−5、表3−1−6、表3−1−7、表3−1−8、表3−1−9、表3−1−10、表3−1−11、表3−1−12、表3−1−13、表3−1−14、表3−1−15、表3−1−16、表3−1−17)
受振点No.560(RP.560)あたりの深度1200m付近には、背斜状の強振幅イベントが認められる。また、不整合の関係でこれを埋積する比較的フラットなイベントが認められる。この強振幅イベントの下位のP波区間速度は2.7 km/s以上を示しており、三浦層群上部の速度として妥当である。以上から、この背斜状の強振幅イベントは三浦層群の上面と解釈できる。これに接続する形で、2.8 km/s以上の区間速度を示す領域(黄色)は三浦層群上部と解釈できる。これ以深では上総層群中にみられた連続性が良くシャープな反射波は認められない。そのかわり、凸凹を有し、比較的強い振幅の反射波群が認められる。
基盤反射波は、東端で深度約3100m(約2.5秒)であり、西端では基盤上面の形態が不明瞭であるが深度2500m弱(約2.0秒)と推定される。測線西端から測線中央にかけて東側に緩やかに傾斜しており、受振点No.360付近で深度3000m(約2.4秒)となる。基盤面は200m程の高低差を持つ凹凸が存在する。屈折法調査により、この基盤上部の速度は約5.2 km/sと推定されたことから、岩質は四万十帯(もしくは秩父帯)の先新第三系と考えられる。
図44に、平成7年度に行われた反射法の結果(川崎市、1996)を示す。この測線(N40°E)のRP.172において今回の測線(RP.95)と交差しているが、この点における両者のイメージは良く一致している。この点における基盤深度は約3100mと推定される。図45に、3測線(LINE−95、LINE−98−P、LINE−98−S)の深度断面の対比を行った。平成7年度測線(LINE−95)の解釈図面上のA層〜F層は、今年度測線(LINE−98−P)上でもその特徴がよく対応することがわかる。今年度のS波測線(LINE−98−S)は、LINE−98−Pの東端から約4000m東方に位置し、P波断面図が得られているが、地層層序や傾斜がLINE−98−P測線とよく対応していることがわかり、中原区井田から南東に向かって基盤が浅くなるのが推定される。
両測線ともに、上総層群を含む第四系を明瞭に切る活断層は認められないが、三浦層群中および基盤上部には不規則な傾斜層が存在する。特に、RP.480あたり(川崎市王禅寺)は三浦層群上面および基盤面の傾斜が急であり、発破観測データで異常が認められている地点と一致することから(小林、ほか、1985)、今後、立川断層との位置関係も含めて3次元的な考察が必要である。なお、平成7年度の測線では、三浦層群上面は、1200〜約1800m、基盤面は、2900〜3300mであり、今回の測線では、三浦層群上面は、1200〜約1800m、基盤面は、約2500〜約3300mである。
LINE−98−S測線については、P/S波深度断面図(図46)のそれぞれに、いくつかに細分化した区間のP波およびS波速度を書き加えた。P波断面図では、沖積層基底(深度約20m)以深の上総層群において、明瞭な反射波が多数確認できる。これらは、若干北西に傾斜している。浅い部分ほど傾斜角は小さくなり、傾斜の累積性が認められる。一方、S波断面図では、深度500mまでに有意な反射面が確認できるが、周波数帯が比較的狭く反射波の特徴があまり明確ではない。