・ 本調査では、推定した地下構造モデルについて、代表的な地点(K−NET観測点)の地下構造を抜き出して1次元モデルとしての概略検証を行ったが、盆地や平野端部の影響等地下構造の3次元効果を正確に検証するためには、3次元差分法等を用いた地震波形のシミュレーションによる検証が必要である。特に、神奈川県の場合、北西部で急激に基盤が浅くなること、国府津−松田断層や伊勢原断層、あるいは横浜市北部の段差構造等地下構造の急変箇所が多いことから地震波が複雑に伝播する可能性があるので、3次元的な地震動のシミュレーションは極めて重要である。
・ 深部地下構造は、地震動のうち長周期成分や後続波の特性を左右するが、一方、短周期成分を予測する上では、表層のモデル化が重要である。今回は、深部地下構造をモデル化することが目的であるため、浅部構造はVp2.1km/s(Vs0.7km/s)相当層までにしかモデル化していない。今後、表層のモデル化を行う必要がある。
・ 深部構造については、平成13年度に実施された東京大学地震研究所の足柄平野での探査や平成14年度に相模湾沿いで実施された大大特プロジェクトの探査成果を生かして、特に地震基盤相当層であるVp5.5km/s層の見直し、更新を行うことが望ましい。
・ 地震動を予測する上では、P波速度以上にS波速度が重要である。一般に、地下構造モデルを作成する場合、本調査のように、比較的既往データが多い人工地震探査や反射法地震探査で得られたP波速度構造をベースに作成するケースが多い。その場合に、P波速度に対応するS波速度構造をいかにして精度よく求めるかが問題となる。今回、微動アレイ探査で得られた表面波の分散曲線を検証データとして利用して、P波速度構造から対応するS波速度構造を求める手法を試みた。この手法では、逆解析の一意性に課題のある微動アレイ探査をより効果的に利用してS波速度構造を求めることができる。今後の地下構造モデル作成の1つの手順として有効ではないかと考える。