そこで、比較的基盤深度の深い厚木と平塚の2地点について、微動アレイ探査で得られた分散曲線を基準データとして地下構造モデルを修正することを検討してみた。
図3−3−3−2−1、図3−3−3−2−2に、地下構造モデルから理論位相速度を計算し、微動アレイ探査結果により得られた観測値との比較を行った結果を示す。図中、左上が位相速度比較図、右上がH/Vスペクトル比較図、左下がS波速度構造モデル図、右下がS波速度構造モデルの数値一覧となっている。
左上の図より明らかなように、今回の地下構造モデル(初期モデル)による理論位相速度は観測値を満足していない。そこで、微動アレイ探査による観測値を満足するようなモデルを試行錯誤法で求めた。その際、地下構造モデルの各層境界深度は変えず、S波速度のみを変更して観測値を満足するモデルを求めた。図中には、
@ 地下構造モデル(初期モデル)
A 初期モデルのS波速度のみを変更した結果(Vs調整後モデル)
B Vs調整後モデルに表層を付与し、より高周波部分の観測値を満足するように微調整したモデル(検討結果)
C 微動アレイ探査結果
を示した。結果としては、2地点共に微動アレイ探査による観測位相速度分散曲線をほぼ満足するモデルを作成することが可能であった。
以上の検討の結果は、比較的既往調査結果の豊富なP波速度構造情報をもとに、地下構造モデルを作成する場合、S波速度構造を推定するための1つの手法として、調査地域内の微動アレイ探査で得られた分散曲線を基準データとしてP波速度に対するS波速度を求める方法が有効であることを示している。
図3−3−3−2−1 位相速度を用いた地下構造モデルの検証
図3−3−3−2−2 位相速度を用いた地下構造モデルの検証