(2)地震波形のスペクトル特性と理論増幅率の比較

神奈川県(2001)で行われている強震記録のスペクトル解析による検証を、本年度作成した地下構造モデルを用いて行った。比較に使用したデータは、神奈川県(2001)からの引用である。解析に使用した地震及び観測データ処理方法は、下記のとおりである(神奈川県,2001)。

・利用した地震 

発生日時          震央位置          深さ      M     最大震度

年月日     時分   北緯(度分)  東経(度 )    (km)

1997/09/08  08:40 35 33.0   140 00.0    110   5.1      3

1998/05/16  03:45 34 58.2   139 56.6    74    4.8      3

1998/08/29  08:46 35 36.2   140 02.7    67      5.1      4

1999/09/13  07:56 35 33.9   140 09.5    77    5.0      4

2000/06/03  17:54 35 40.6   140 43.1    50     6.0      5弱

・スペクトルの計算方法

観測波形のスペクトルは、S波主要動を含む40.96秒間の水平2成分のそれぞれの記録に対し、FFTによるフーリエ解析を行い、位相を考慮した合成スペクトルを作成し、バンド幅0.2HzのParzenウィンドウによる平滑化を施し、水平2成分合成のスペクトル特性を求める。

図3−3−2−4に、神奈川県(2001)による結果図に、今回の地下構造モデルから計算される理論増幅率を重ねた結果を示す。なお、計算に用いた構造は、神奈川県(2001)と同様にPS検層が行われている深度まではその速度構造を利用し、その深度以深に今回の地下構造モデルが続くモデルを作成した。ただし、PS検層の最深部と今回の地下構造モデルのP波速度2.1km/s層上面の間についてはモデル化を行っていないため、2.1km/s層の物性値を与えた。各層のQ値については、PS検層部分については神奈川県(2001)のQ値を引用し、今回の地下構造モデル部分についてはS波速度の1/15と仮定した。

今回の地下構造モデルによる理論増幅率は、地震記録のスペクトル特性の形状とほぼ同様な形状となっている。特に、KNG006(二俣川)・KNG007(藤沢)・KNG009(厚木)・KNG010(平塚)などは、地震記録のスペクトル特性の形状と類似性が高い。一方、KNG001(川崎)やKNG003(横須賀)の4Hz以上の高周波帯域や、KNG004(三崎)の4〜5Hzなど一部で違いが見られる。しかし、この高周波帯域における違いは神奈川(2001)の理論増幅率も同様の傾向を示している。この高周波帯域における地震記録のスペクトル特性の形状と理論増幅率の違いについては、神奈川(2001)ですでに検討が行われており、

@ 浅部(深度約30m以下)に存在する速度コントラストが大きい速度層以浅の構造、

A 浅部に存在する低速度層

の影響が大きいためであると思われる。

以上の検討の結果、今回作成した地下構造モデルは概ね妥当であることが確認された。

図3−3−2−4 地震波形のスペクトル特性と理論増幅率の比較