(4)P波速度構造モデルと地質との関係

図3−2−2−4−1図3−2−2−4−2図3−2−2−4−3に示した各速度層と地質との関係を考察すると、嶺岡−葉山隆起帯より北方の関東平野では、地質と速度層の関係が明瞭である(図3−2−2−4−1)参照)。P波速度2.1km/s層の上面は上総層群、P波速度3.1km/s層の上面は三浦層群と一致している。また、P波速度4.8km/s層の上面は先新第三系上面(三浦層群との地質境界)にほぼ一致している。P波速度3.5及び4.3km/s層の上面は、地質との関係は明瞭でない。足柄平野〜藤沢市付近の三浦層群下部や先新第三系上部の速度層に相当する。

先新第三系は4.8及び5.5km/sに区分される。両速度層の境界は地質境界としては明瞭な区分はないが、4.8km/s層の上面は東西断面でY=−50000m付近より北側で薄く、南ほど厚くなる傾向がある(図3−2−2−4−1参照)。関東平野の基盤は、北より南へ、足尾・八溝帯、領家帯、三波川帯、秩父帯、四万十帯北帯及び南帯より構成されており、これらが帯状構造をなしている。鈴木(2002)はボーリングデータに基づき、関東平野の基盤構造を推定している。これによると、4.8km/s層が北側で薄くなる位置は、秩父帯と四万十帯の地質境界にほぼ一致している。三波川帯〜秩父帯では、4.8km/s層は薄く、基盤岩ではすぐに5.5km/s層に達するが、四万十帯では4.8km/s層が厚く、5.5km/sは深い位置にある。

四万十帯における4.8km/sと5.5km/sの速度境界は、地質境界ではなく、圧密によるものと考えられる。このような地質構造を反映して、南部ほど4.8km/s層が厚く、5.5km/s層が深くなっている。

嶺岡−葉山隆起帯では、先新第三系が露出している地域がある。これらの地域では、風化により表層に低速度層が分布しており、地質との関係は明瞭ではなくなる。また、相模トラフのプレート境界に近づくほど、5.5km/s層は深くなる。

図3−2−2−4−1 地質および速度構造東西断面

図3−2−2−4−2 地質および速度構造東西断面

図3−2−2−4−3 地質および速度構造東西断面

図3−2−2−5 H12年度深部地下構造モデルと今回の結果の比較