文献の速度データは基本的にそのまま用いているが(巻末資料「文献による地震探査結果」参照)、周辺の速度構造や地質データと矛盾する文献もある。
・ 夢の島爆破関係の文献のうち、神奈川県(2001)で再解析が行われた測線(文献7、8、9、10、11、12)については、再解析された結果を使用した。ただし、神奈川県(2001)の再解析結果で信頼性が低いと判断される個所(速度構造断面で波線で表示されている部分)はデータとして採用しなかった。
・ 足柄平野にはJESG(1991)などの多くの文献があるが、前章で述べたように、各測線の交点で速度構造が矛盾しているものがある。そのため、再解析した結果(文献20、21)及び文献18のみを用いて地下構造を検討した。
・ 文献16は伊勢原断層を対象とした反射法探査であり、P波速度構造はやや信頼性が乏しいと判断された。そのため、データとして採用しなかった。
・ 千葉県中部の屈折法地震探査である文献3(嶋ほか,1983)は片走時を用いた解析結果である。文献38(座間ほか,1989)で往復走時による解析が行われており、この解析結果を用いた。
・ 文献38(座間ほか,1989)ではVp4.3km/s層が観測されている。しかし、北側の文献50、51では本速度層は観測されていない。後述するように、4.3km/s層は関東平野で一般的な速度層ではなく、神奈川県西部で認められる速度層である。地質データでも房総半島中部では4.3km/s層は分布しないと考えられる。そのため、文献38の4.3km/sを4.8km/sと解釈した。
・ 伊豆半島から丹沢山地にかけてはAsano et al.(1985)による屈折法地震探査結果がある。しかし、この探査は深い構造を目的とした探査であり、地震基盤より浅い地盤の速度構造を目的とする解析には適用できない。伊豆半島では、文献33(Asano et al.,1982)及び文献35(Yoshii et al.,1986)で地震基盤より浅い構造が検討されており、これらの文献で地下構造を検討した。
図3−2−2−1 文献位置図