伊豆半島および丹沢山地は、南部フォッサマグナに属しており、新第三紀から第四紀にかけての火山噴出物を主体とする地層からなる。
伊豆半島の湯ヶ島層群および白浜層群は、新第三紀中新世から鮮新世の火山岩類を主体とする地層からなる。また、伊豆半島には箱根火山などの第四紀火山岩類が広く分布している。
丹沢層群は中新世の火山噴出物や堆積岩類からなる。本層は地下深部に埋没したのちに、神縄断層の活動により隆起し、地表に露出したと考えられている。埋没深度が大きく、変成作用を受け結晶片岩になっている。また、岩体のほぼ中央には深成岩類が貫入している。
神縄断層で北側の丹沢層群と接している足柄層群は、鮮新世〜前期更新世の粗粒な堆積物である。堆積相の解析によると、下位から上位に向かって、深海底から臨海扇状地へと堆積環境が変化しており、古相模トラフを充填した堆積物と考えられている(天野ほか,1990,1999など)。
大磯丘陵は南部フォッサマグナと関東構造盆地の境界付近に位置している。相模トラフの北東縁には、沖ノ山堆列と呼ばれる隆起帯が発達しており、大磯丘陵はこの隆起帯の陸側延長と考えられている。丘陵には中期更新世の二宮層群や後期更新世〜完新世の火山灰層が広く分布している。中新世の高麗山層群や大磯層は断片的に露出しているだけである。
藤野木−愛川線北側で関東平野の西縁をなす関東山地には、三波川帯、秩父帯、四万十帯の基盤岩が分布している。これらは中生代ジュラ紀〜新生代古第三紀の付加体であり、西北西−東南東方向にのびる帯状構造をなしている。付加年代は北側で古く、南側ほど若くなる。これらの地層が先新第三系基盤として関東平野下につづいている。
三浦半島と房総半島では、嶺岡−葉山隆起帯に沿って、嶺岡層群と保田・葉山層群が露出している。嶺岡層群はチャート、石灰岩、玄武岩類を伴い、蛇紋岩などの超塩基性岩類に貫入されている。関東構造盆地の堆積岩類とは岩相が異なる古第三紀の付加体であり、四万十帯南帯に属すると考えられている。保田・葉山層群は、嶺岡層群の南北両側に分布している。嶺岡層群と同様に、蛇紋岩などの超塩基性岩類や玄武岩類を伴う。四万十帯南帯に相当するかどうかについて定説はないが、新第三紀中新世前期〜中期の付加体と考えられる。
嶺岡−葉山隆起帯から北側の関東平野には、新第三紀から第四紀の砕屑性堆積岩類が分布している。これらは下位より三浦層群、上総層群および相模・下総層群に区分される。鈴木(2002)は関東で行われたボーリング試料および地震探査の結果から、これらの地層の等深線図を作成している。図3−2−1−2に各層上面の等深線図を示す。これによると、先新第三系上面の最深部は房総半島中部にあり、堆積物の厚さは4,000m以上に達する。図3−2−1−3には関東地方の重力ブーゲー異常(長谷川ほか,1990)を示す。負の重力ブーゲー異常分布は、堆積岩類が厚い場所とほぼ一致している。
図3−2−1−4に、鈴木(2002)による関東平野下及び周辺の先新第三系の分布を示す。これによると、神奈川県北東縁の多摩川に沿って、北側の秩父帯と南側の四万十帯の境界が推定されている。