神奈川県西部は南部フォッサマグナと呼ばれる地質構造区の南東部に位置する。図3−2−1−1に松田(1989)による南部フォッサマグナ地域の地質概要を示す。赤石山地東縁の糸魚川−静岡構造線と関東山地南縁の藤野木−愛川線に囲まれた地域が、南部フォッサマグナ地域である。本地域は、新第三紀から第四紀にかけての膨大な量の火山噴出物と砕屑性の堆積岩類で特徴づけられる。その岩相が東北地方のグリーンタフに類似していることから、グリーンタフの南方延長とする説もあるが、堆積相の解析や微化石分析などから、フィリピン海プレート上の古伊豆−マリアナ弧が本州側に衝突・付加し、形成されたという考え方が一般的である(天野ほか,1990,1999など)。藤野木−愛川線は、三浦半島から房総半島に発達する葉山−嶺岡隆起帯につづくと考えられている。
丹沢山地南縁の神縄・国府津−松田断層は、フィリピン海プレートと本州側プレートとの境界をなす断層の一部である。藤野木−愛川線は古いプレート境界と考えられている。
神奈川県東部は、関東構造盆地の南西部に位置している。関東構造盆地は、南部フォッサマグナの北東縁をなす嶺岡−葉山隆起帯の北側に発達している。先新第三系を基盤として、新第三紀〜第四紀の砕屑性の堆積岩類が厚く堆積している。南部フォッサマグナが火山性の地層を主体とするのに対して、関東平野は非火山性の地層からなる。
神奈川県西部は、南部フォッサマグナ地域の火山噴出物を主体とする地域であり、地形はほとんど山地からなる。沖積低地は足柄平野の酒匂川に沿って発達しているだけである。東部の関東平野には丘陵や台地が発達している。丘陵の主なものは、多摩丘陵、三浦丘陵、大磯丘陵などであり、台地は相模原台地、下末吉台地などからなる。また、多摩川や相模川沿いに沖積低地が発達している。