(2)整合的ではない結果とその理由

小林他(1985)(測線番号17)では、4.9km/s相当層が足柄平野の範囲では、深度1400m程度と推定されているが、それとほぼ平行する今回のB測線では、4.3km/s相当層が最深部では2500〜3000m程度と深い。従って、A測線や笠原他(2001)との交点でも整合しない。ただ、小林他(1985)の結果は片走時のデータに基づいているため、特に傾斜の急激な変化が想定される南北方向の結果については注意が必要である。

長谷川他(1992)(測線番号19)でも、4.2km/s相当層が深度1000m付近に推定されているが、今回のB測線との交点では一致しない。ただ、B測線の結果では、4.3km/s層が測線北端に向けて深度1000mくらいまで急激に浅くなっているので、長谷川他(1992)で解析されている屈折波はその付近を伝播した屈折波の可能性がある。

ESGの報告書(1991)で報告されている測線番号23の結果も4.0km/s層が深度1500m付近に推定されており、この層を4.3km/s層に対応する層と考えると、今回のB測線との対応はよくない。しかしながら、B測線でも、4.3km/s層の上には、3.5km/s層が厚く堆積していることから、ESG(1991)で推定された4.0km/s層の上部が3.5km/s層で、下部が4.5km/s層と考えると今回の結果とも整合する。

以上のとおり、既往の探査結果と今回の再解析結果とは、4.3km/s相当層の深度においてあまり整合しない。ただ、今回の結果では、4.3km/s層上面の形状から推定すると、平野部分が盆地形状をしており、探査測線を設定する場所によっては、速度値に違いが生じる可能性がある。今回のA、B両測線はその形状を把握する上で適切に設定されており、細かな受振点間隔で高精度の測定も行われていることから、今回は、互いに整合性のよい今回のA、B両測線の解析結果と笠原他(2001)をもとにモデル化を行うこととした。