ｔｉｔｌｅ

２－３　微動アレイ探査の概要
地球の表面は地震の無いときでも絶えず揺れており、人間に感じることの出来ないような非常に小さな揺れのことを微動という。微動は風、雨、気圧変化、川の流れ、遠い海の波などの自然現象や工場、車、人の通行などの人間活動によって引き起こされる。

微動の成分は実体波と表面波によって構成されている。微動の振動源は上記のように主に地表震源であるので、地表面で観測される微動は実体波より表面波が卓越すると考えられている。微動探査法で取り扱う波動は主にこの表面波である。

表面波はレイリー波とラブ波から構成され、位相速度が周波数によって異なるという速度分散性を持っている。表面波の分散は観測地点のアレイ展開範囲内（以下、「調査地点」あるいは単に「地点」と称す）の平均的なＳ波速度構造によって決定されるので、微動観測によって位相速度を求めることが出来れば、調査地点のＳ波速度構造についての情報を得たことと等価になる。

微動観測によって位相速度を求めるには、地表において複数の地震計を設置（地震計の群設置）し、同時刻に複数地点の微動信号を記録（アレイ観測と言う）したのち、この微動を定常確率過程として取り扱い、ＳＰＡＣ法あるいはＦＫ法を用いて行われる（詳細は後述）。

地下構造は、水平層状モデルについて各層のＳ波速度が分かれば理論計算により表面波の分散を求めることが出来るので、微動観測によって得られた位相速度に最も適合する層状モデルを逆解析により求め、地下構造を推定する。

以上をまとめると微動アレイ探査は次の３項目の手順により行われる。

①地表面に微動計を群設置し、微動を観測する（微動のアレイ観測）。

②アレイ直下の地下構造についての情報を、表面波の分散状況を示した位相速度曲線（位相速度と周波数の関係）としてまとめる。

③得られた位相速度曲線を満足するような地下構造を逆解析により推定する。