3−1 調査方法の概要

一般に岩盤の弾性波速度は砂や粘土などの未固結地盤の弾性波速度より速く堆積岩であれば、堆積年代が古いほど、また、火成岩であれば地表近傍で固結した火成岩よりも地下深部で固結した深成岩の方が弾性波の伝播速度は速い。つまり、地表から深部にいくに連れて弾性波伝播速度は速くなるという地下構造が広く存在している。屈折法は地下深部ほど弾性波の伝播速度が速くなるという仮定に基づいた探査手法である。今、2層構造を仮定して、発振点で発振したデータを考え、1層目および2層目の速度をV1およびV2とすると入射角(i)と屈折角(r)の間には、

    sin i/sin r=v1/v2      (1)

の関係がある。r=90°の場合、iを臨界屈折角とよび、このとき波動は2層目の上面に沿って進み、その途中は臨界角で上の層に再び入射する。

   sin i=v1/v2      (2)

震源から適当な間隔で受振点を設け、縦軸に初動走時、横軸に震源からの距離を示した走時曲線を示すと、原点に近い部分は上の地層をV1の速度で伝播してきた弾性波の走時をを示すが、原点からの距離がある値に達すると、1層目を伝播してきた直接波の伝播時間より、第2層の上面を伝播してきた屈折波の伝播時刻の方が早くなり、走時曲線は折れ曲がる。屈折法においては、この走時曲線に基づき、各地層の弾性波速度、下の層の傾き、深さを算定し地下の地質構造を推定する。各地層における伝播速度は走時曲線の傾きから求まるが、2層目以下は一般に傾斜しているので走時曲線の傾きから得られるのは見かけ速度となり、真の速度を求めるためには、測線の両側に震源を設け、お互いに反対方向に観測する必要がある。屈折法地震探査においては、展開長または震源と受振器の距離は対象深度のおおよそ5〜10倍程度必要である。今回の調査では、屈折波地震探査震源として50〜200kgのダイナマイトを使用した発破を用い、受振器は反射法地震探査用に展開した全受振器を用いた。今調査では、最大オフセット距離20kmを有しているので深度4km前後の構造が把握できる可能性がある。