9−3−2 ランニング・スペクトル解析

各強震観測点において、地震波の卓越周期と到来時刻を調べる目的で、ランニング・スペクトル解析を行った。また、この解析により、表面波の分散性を明らかにすることができる。

偏向解析の結果、ほぼ|φ|>70°のSH波あるいは Love波が卓越していることから、解析にはEW成分の速度波形を使用した。また、神奈川県東部に位置する横浜市の高密度強震計ネットワークの観測点とK−NETの観測点では、偏向解析結果で同様の振動性状を示していることから、K−NETと神奈川県震度情報観測施設で得られた強震記録について解析を行った。

K−NET10点での解析結果を図9−3−8に、そして神奈川県震度情報観測施設9点での解析結果を図9−3−9に示す。

S波初動部については、約3sの卓越周期を有していることがわかる。

S波初動後の後続波群については、神奈川県東部において、明らかな分散性を示しており、8〜10s 程度の卓越周期をもつ表面波から約5〜6sの卓越周期をもつ表面波に移行している状況が読み取れる。ただし、東部においても、KNG003(横須賀)やKNG005(鎌倉)では顕著な分散性は見られず、観測点近傍の地盤条件が影響しているものと考えられる。

一方、神奈川県中部から西部にかけては、東部において見られるような分散性が顕著には認められない。偏向解析の項で見たように、神奈川県中部から西部にかけては、東部に比べて表面波に相当する長周期の後続波群が見られず、全体的に短周期の振動が卓越することと対応する。