図6−6の速度層断面から第4速度層は北へ行くほど層厚が薄くなる傾向にある。
解析測線d(夢の島−小田原測線)では、第4速度層の速度値は4.8km/sであるが、平塚発破点の西側で4.3km/sの速度値を示す。これは、全域の第4速度層のP波速度(4.7〜5.2km/s)に比べてもやや低い値となっている。この測線に近接する厚木観測井の音波検層結果においては、深度1800m付近で約4.0km/sの速度値が得られている。第4速度層は、先新第三系に相当すると考えられるが、相模川以西では山地部に丹沢帯(新第三紀)が分布しており、愛川層群を含めた丹沢帯が、平塚以西の4.3km/s層に相当するものと考えられる。
神奈川県は、東部から中部にかけての堆積平野(台地、丘陵、低地)と、西部の山地を中心として丘陵・平野・盆地などで構成される地域に分けられる。東部から中部の堆積平野は先新第三系の基盤を被う新第三紀以降の堆積物で構成されている。表10−1−1で見てきた速度層は、この堆積平野と先新第三系に相当する。
これに対し、西部は新第三紀以降の火山活動で生成された火山砕屑物(グリーンタフ)等により構成されており、地質構造も複雑である。北部の先新第三紀層とは構造線により接している。既存屈折法地震探査の測線のうちd測線は、一部がこの西部地域に伸張しており、平塚付近の東側と西側で基盤速度が異なることが判明した。なお、b測線の座間から大山にかけては、この地域に属するが、片発破であることから必ずしも今回求められた第4速度層の速度値(4.9km/s)の信頼性が高いとは言えない。
相模平野から丹沢山地に至る地域は、山地と平野の境界部にあたり、地震動を予測する上で重要な箇所である。今後詳細な調査が必要とされる。また、相模川下流部〜平塚〜大磯丘陵〜足柄平野に至る海岸沿いの地域は、国府津・松田断層が足柄平野の東端に位置しており、震源断層域を内包している。このため、この地域の地下構造は非常に重要な要素となる。