これまでいくつかの手法が試されており、VSPの初動振幅を解析する手法は試されたことがあるが、信頼性のあるものとは言い難い。逆に、シミュレーションを実施しながら、適切な値を探るのが妥当と考えられる。なお、通常シミュレーションに用いるQ値は、S波のQ値(Qs)であり、P波のQ値はほとんど用いられない。
山水ほか(1983)は、下総地殻活動観測井のS波大砲による速度測定の振幅情報を用いて、Q値を算出している。これは、SH波発生機を用いて 、3.5〜20Hzの周波数領域で、
堆積層中 Qs = 21±7(深度 0.0〜0.351km)
51±6(深度 0.351〜0.848km)
48±11(深度 0.848〜1.502km)
基盤岩中 Qs > 150
の値を得ている。
山中ほか(2003)は、関東平野の中小地震の強震記録から、伝達関数の逆解析により堆積層中のQ値について、0.1〜1Hzの周波数領域で、
Qs = Vs/42 (Vsの単位は m/s)
という関係式を求めている。これは、従来用いられている堆積層における簡易式
Qs = Vs/15 (Vsの単位は m/s)
より小さい。
なお、平成12年度千葉県の総合解析で、下総地殻活動観測井の観測記録を解析して得られた結果では、堆積層中でQs = 10〜20程度の値を用いた。上記山中ほか(2003)の式に下総地殻活動観測井でのS波速度を当てはめると、Vs=400m/sの時Qs=9.5、Vs=1600m/sの時Qs=38となり、ほぼ妥当な値であったといえる。
Q値は、地震波の周波数に依存するという考え方もあり、その場合は、上記の値にとらわれない検討が必要である。