なお、南北方向の断面図を図3−5、図3−6、図3−7、図3−8に、東西方向の断面図を図3−9、図3−10、図3−11に示した。さらに、先新第三系基盤上面等深線図・上総層群基底等深線図・下総層群基底等深線図を図3−12、図3−13、図3−14に示した。
今回解析したS波速度構造について、下記に要点をまとめる。
○先新第三系基盤上面深度は保田層群相当層を推定した13−01−FUT地点・13−02−SDU地点・13−03−YSD地点・13−05−IIC地点で、深度4000m以上という解析結果となった。特に13−02−SDU地点・13−03−YSD地点・13−05−IIC地点では深度4500mをこえている。今回の調査で深度4500mを超えるのは、この3地点だけで、先新第三系基盤上面の最深部が、房総半島の東京湾岸部にある可能性がでてきた。これは、図1−1等に示したブーゲー異常図で東京湾東部にある低重力域の(L)と記された底部に近い位置である。
○今回の調査結果及び平成12年度微動アレー調査結果から先新第三系基盤上面の深度分布図を作成して図3−12に示したが、上面深度の深い部分が図1−1の重力異常(負)に良く対応していると考えられる。
○先新第三系基盤のS波速度は平成12年度微動アレー調査に比べて全体に低い値となった。今回の調査地域は基盤の構造区分として三波川〜秩父〜四万十北帯にまたがるが、それらによるS波速度の違いははっきりしなかった。ただ、三波川帯に属しているといわれる13−09−YKCと13−10−SKRの2地点のS波速度が2.85km/sで、今回の他の探査地点に比して高くなっている。
○13−01−FUT地点・13−02−SDU地点・13−03−YSD地点・13−05−IIC地点の解析で、深部のフィッティングが悪いため、大佐和GS−1の試錐データや平成13年度地震探査を参考に保田層群相当層を仮定して解析したところ、フィッティングが改善された。そこで、上記4地点では保田層群相当層を入れて解析を実施した。保田層群相当層の上面深度は2680〜3220m、層厚が1430〜1750m、S波速度1.86〜2.00km/sとなった。
○保田層群相当層は、今回の調査結果でみる限り、富津から北東方向に市原まで帯状に分布しているように見え、これは平成13年度地震探査の調査結果にあうものである。南側は地表に露出している(図2−1−12参照)が、北へは13−06−CBA地点・13−07−CBC地点で解析されず、分布はしていないと推定される。
○保田層群相当層の分布状況を図2−1−13の断面図で見ると13−05−IIC地点と13−07−CBC地点間で、先第三系基盤が1500m近く浅くなるのに合せて、保田層群相当層の分布がなくなっており、この間で南北の地質分布に変化があることが伺われる。
○三浦層群相当層は調査地域北部の13−09−YKC地点と13−10−SKR地点を除く探査地点で解析された。そのS波速度の範囲は1.27〜1.65km/sだった。また、層厚の厚い地点では2層で解析し、下部の方が高いS波速度だったが、極小アレーで三浦層群相当層の上部に高いS波速度を解析した地点もあり、本層のS波速度の変化は大きいと推定される。
○13−04−USK地点の上総層群と先新第三系との間は三浦層群相当層としたが、この層を2層に区分し、下部にS波速度の高い保田層群相当層が分布している可能性もある。
○三浦層群相当層の層厚分布は13−04−USKが一番厚く、2860mだった。この付近は既存の試錐データ等が少なく、前項の理由で三浦層群相当層の層厚が薄くなる可能性もある。13−04−USK地点に次いで13−01−FUT地点〜13−03−YSD地点付近が最も厚くなるが、いずれも先新第三系基盤深度の深いところで厚い傾向にある。
○今回の微動探査結果から作成した上総層群基底等深線図を図3−13に示したが、最深部は深度2000m以上で13−06−CBA地点から13−07−CBC地点という東西方向に伸びているように見える。南北方向の断面図(図3−5、図3−6、図3−7)では、上総層群基底深度は最深部から北・南の両側へ徐々に浅くなっている。これらと、図2−1−13に示す既存資料を比べると、最深部の位置や深度、さらに南北への傾向は図2−1−13の市原付近で等深線がやや密になっているところも含めて、ほぼ合っている。ただ、木更津から富津にかけては今回の調査結果の方が深くなっている。
○上総層群の層厚は基底の深い13−06−CBA地点から13−07−CBC地点が厚く、13−06−CBA地点が1830mで最大となっている。南北の断面図で見ると、北側の方が厚く分布し、南北で分布に違いがある。
○上総層群のS波速度は0.67〜1.15km/sとなった。地点ごとに違いがあるが、このうち下部でS波速度が1.00km/sとなったのは、全て層厚が1000mを超えている地点である。また、0.7km/s以下になったのは13−06−CBA地点と13−08−YCM地点の上部で、この2地点は図2−4−41で下総層群と上総層群が整合の層序関係で発達するとされている地域にある。
○下総層群基底深度は試錐データが多いので、多くは既存資料に近い深度で解析できた。ただ、既存資料の図2−4−41と比べると13−05−IIC地点だけが100m以上浅くなった。この地点は図3−14の下総層群基底等深線図を見ても東京湾岸の下総層群最深部を二つに分ける存在となっている。
○下総層群のS波速度の範囲は0.20〜0.69km/sとなった。このうち0.50km/sを超るのは、層厚が300m以上の地点に多いが、唯一13−04−USKだけ表層から深度190mまで0.6km/sと下総層群としては高い値になっている。
○13−01−FUT〜13−07−CBC〜13−10−SKR断面図で見ると先新第三系基盤深度は13−01−FUT以南のデータがなく不完全であるが、13−02−SDU地点・13−03−YSD地点・13−05−IIC地点(袖ヶ浦市〜市原市)付近を最深部とする船底型を呈している。13−05−IICから北側では基盤深度が徐々に浅くなり、それにつれて上位の保田層群相当層、三浦層群相当層が順次分布しなくなる。
○内陸部の13−04−USK〜13−08−YCM断面では、基盤上面深度と三浦層群相当層上面深度は調和せず、三浦層群相当層上面深度と上総層群上面深度はやや調和的に変化している。