次に、坑底と地表の観測波形の整合性であるが、ここでは精度をあげるため、VSPを主体として反射法地震探査、微動アレー調査から求めた6層のS波速度モデルを用いた。
シミュレーションによる波形の比較を図3−46に示す。図の上段が地表での波形、中段が解放基盤上の波形、下段が坑底での波形である。
上段の地表波形は、観測波形に1Hzのローパスフィルターを施したもの、坑底波形からQ=50およびQ=10として6層モデルで計算した地表波形の比較である。S波初動部に相当する波形は、Q=50でもQ=10でも良く似ているが、Q=50とすると、図中で12秒ぐらいからの後続波の波形がかなり強く現れる。
中段はQ=50,Q=20およびQ=10のときの解放基盤であるが、Q=10の場合が比較的初動部にエネルギーが集中する傾向が見られる。
下段波、Q=10とした場合に、地表観測波形から坑底波形を逆算したものであり、このシミュレーションが正しいことの検証にもなっている。
以上から、Q値は10〜20程度の値がふさわしいであろうことが推察されるが、以下のシミュレーションでは波形が良く一致するQ=10を採用して行った。
図3−47は、解放基盤波形を入力とした下総観測井でのシミュレーション結果である。最上部が地表観測波形に1Hzのローパスフィルターを施したもの、その下が地表での計算波形である。下段左は加速度の振幅スペクトルを示す。地上観測波形のスペクトルは、ローパスフィルター前のものである。下段左は用いたS波速度モデルである。
ここでは、他の観測点との整合性を取るため、4層モデルを用いている。ただし、精度の評価のため、4層モデルにS波の速度を微動アレー調査のものではなく、P波速度から換算式でS波速度に直したものを加えた。さらに、微動単独で求めたS波速度構造(基盤深度が異なる)も加えた。
結果的には、こられのモデルのうち、どれが正しいかを判断するほどの違いは見られなかった。従って、ここでの議論は4層モデルで十分と考えられる。