(2)位相速度解析方法(SPAC法とESPAC法の併用)について
・当初、位相速度の決定のための解析方法としてESPAC法を採用した。この方法はアレーサイズ毎のデータを特に区別せずに統合して解析する方法であり、「周波数を一定とし、アレーサイズ(距離)を変数とした空間自己相関係数に最適なベッセル関数をあてはめる方法」である。しかし、No.25(SMU)地点の最大アレー半径2,000mの解析結果において、求めた基盤のS波速度は既存資料と比較したところ、かなり小さい値であったためESPAC法の再検討を実施した。その結果、ESPAC法による位相速度解析には、精度の異なるデータを同等に評価してしまう欠点が認められた。すなわち、低周波数領域において相対的に推定精度の低い小アレーのデータから求めた係数を、相対的に精度の高い大アレーのデータの係数と同等に評価してしまうことであり、また逆に高周波数領域では、精度の低い大アレーのデータから求めた係数を、相対的に精度の高い小アレーのデータの係数と同等に評価してしまい、結果としてS波速度の精度が劣ることが判った。・そこで、「浅部の構造は小さいアレーで」、「深部の構造は大きいアレーで」と、対象深度に応じてアレーサイズを区別する位相速度の解析方法であるSPAC法でNo.26(FNB)地点の再解析を行った結果、得られた基盤のS波速度は、既存資料(VSP探査)の結果と調和的であった。ただし、SPAC法で解析した個々の分散曲線は、アレーサイズ、アレーの展開位置などの違いにより、必ずしも一致していない結果もある。これは、空間自己相関係数を示す曲線に、解析に適さない低周波数領域の位相速度が含まれることが原因となることからくる欠点である。したがって、位相速度解析に関しては、SPAC法およびESPAC法での両方の解析方法を併用して行い、クロスチェックすることが現状では最良と判断した。