(2)SPAC法とF−K法の比較

SPAC法およびF−K法のアレーを設定し、それぞれのアレーによる解析結果について比較検討を行った。F−K法に関しては、原理としてアレーの形についていろいろな設置間隔があることと、いろいろな方向をカバーするような配置であることが望しい。しかし、F−K法のアレー形状は、十字型アレー配置を採用し、東西方向(長軸方向で全長は1,800mと設定)と南北方向(短軸方向で全長は600mと設定)に地震計を設置(異なる地震計間距離がとれる配置)した。さらに、F−K法の観測においては、SPAC法と同じアレー形状の円形アレー(二重正三角形で最大アレー半径は1,000mと設定)も実施した。以下にSPAC法とF−K法の比較・検討結果を述べる。

・F−K法はSPAC法に比べて求めた位相速度の周波数範囲が狭く、かつ、ばらつく傾向が認められた。また、深部のS波速度構造の解析をSPAC法と同等に行うためには、円形状のアレーの場合、SPAC法の2倍程度のサイズが必要であった。

・F−K法による位相速度解析の結果は、SPAC法の結果と比べ、低周波数側において位相速度が大きい値となった。その要因として「縮重現象」が挙げられる。この現象により相対的に大きな位相速度を与えることとなったと考えられる。縮重現象は、十字型アレー配置における最大観測点間隔よりも長い波長の微動を観測したときによくみられる。長い波長の微動が複数の方向から到来すると、F−Kスペクトル上でうまく分離できず、あたかも微動が一方から到来したかのような「ゆるやかな」1つのピークを形成する現象(凌・岡田1992、岡田他1995、宮腰他1996)である。ピークの位置がほぼ例外なく波数座標の原点方向にずれる。このため解析される位相速度は、実際に到来した位相速度よりも大きな値となってしまう。

・F−K法の場合はSPAC法と異なり、同一周波数においてときどき複数の位相速度が求められることがあった。しかし、どの位相速度が適切であるかの判断は、既存データなどの先見的情報がないと非常に困難であった。

・F−K法にとって最も重要な物理量は、F−Kスペクトルであり、歪みのないF−Kスペクトルを得るには、円形あるいは正三角形を基本とする方位に偏りのない複合アレーが望ましいと判断した。

・上述したように、微動アレー調査の手法としてSPAC法の方が優れていると判断した。