表2−13−1にパターン分類別の第1層目〜第6層目(5層構造の場合は第5層目まで)のS波速度の平均値を、表2−13−2にパターン分類別の各層の層厚の平均をそれぞれ一覧として示す。
地質との対比についての考察は、平成10年度の調査開始から、試錐データ、各種物理探査データ等が揃った下総地殻活動観測井(No.25(SMU)地点)を基準(コントロールポイント)として実施してきた。
図2−55に府中・岩槻・下総の各地点の地殻活動観測井の試錐データとNo.25(SMU)地点の微動アレー調査結果(S波速度構造)を対比した図を示す。No.25(SMU)地点の結果を解釈すると、第1、2層目が下総層群(沖積層を含む)に、第3、4層目が上総層群に、第5層目が三浦層群に、そして第6層目が先新第三紀基盤にそれぞれ対応すると考えられる。
また、5層構造モデルとして解析したNo.15(CNT)、No.21(KHK)およびNo.24(NDA)の3地点については、第1、2層目が下総層群(沖積層を含む)に、第3、4層目が上総層群に、そして第5層目が先新第三紀基盤に対応すると考えられ、三浦層群(S波速度の平均値は、パターン分類別でVs=1.23〜1.33km/secの範囲)は欠如した地質構造であると推定される。5層構造のモデルで解析結果を出した理由として、fGAによる逆解析を行う際、この5層モデルが位相速度曲線に最も適切なフィッティングであったことが挙げられる。
ここで、すでに図2−55で示した微動アレー調査結果と地質区分との対比を参考とし、表2−13−1および表2−13−2で示した平均値について記す。
第1層目および第2層目は地質区分における下総層群に相当し、パターンごとに求めた層厚の平均値について、第1層目と第2層目の層厚の和(下総層群の層厚)を求めると、
・パターン@で 330m
・パターンAで 410m
・パターンBで 493m
となる。また、第3層目と第4層目の層厚の和(上総層群の層厚)を求めると、
・パターン@で 773m
・パターンAで 1,047m
・パターンBで 1,612m
となる。さらに、第5層目(三浦層群)は表3−4−2から、
・パターン@で 205m
・パターンAで 253m
・パターンBで 353m
となる。以上の結果から、パターン@〜Bにおいて各層(下総層群、上総層群および三浦層群)の層厚は、パターン@、A、Bの順に厚くなる結果が得られた。
なお、パターン@に該当する7地点のうちの3地点については、5層構造モデルでS波速度構造を求めた地点であるため、ここでの第5層目に相当する三浦層群は、速度変化の傾向からここでは欠如したものであると考えた。
図2−56には微動アレー調査から推定される千葉県西部・北西部地域における先新第三紀基盤の等深度線図を示す。
全調査26地点のうち、最も基盤の深度が浅い地点はNo.24(NDA)の地表下1,000mであり、最も深い地点はNo.7(NRC)の地表下2,620mであった。
本調査地域の地質構造は、前述した結果から下総層群、上総層群、三浦層群および先新第三紀基盤にほぼ対比される地層が、広範囲にわたってほぼ連続して分布した構造である。また、先新第三紀基盤の上面は概ね北東から南西に向かって深くなる傾向があり、各層の層厚も同様に北東から南西に厚くなる傾向がみられる。特に上総層群の主部(中・下部)に相当する第4層目の層厚変化は、この傾向が顕著にあらわれている。これらの変化の傾向については、図2−57に示す既存試錐データ「野田・流山・下総・船橋・江戸川・江東の各地点における既存試錐データの対比(鈴木、1996)」で認められる新第三紀層の存在と基盤岩上面深度の変化傾向と整合したものとなっている。
また、調査地域南部のNo.3(GUT)、No4(ICC)、No.5(FNC)、No.6(MKH)、No.7(NRC)およびNo.26(FNB)の6地点においては、基盤岩上面の等深度線が他の地点と比べ極めて密となる結果となり、特にNo.26(FNB)地点の付近では基盤岩上面の勾配が10°以上と見積もれる。