2−5−1 微動アレー調査法の原理

微動には、人工的なものと自然現象によるものとがある。前者は車両振動等を発生源とし、その特徴として、一般に周期1秒以下の波で、振幅に明瞭な日変化が認められる。このような短周期の微動は、「常時微動」と呼ばれている。一方、後者は主として気圧変化に伴う風や波浪等の自然現象が発生源であり、周期1秒以上の波で、それらの現象の規模によって振幅は変化する。このような長周期の微動は、「長周期微動」あるいは「やや長周期微動」と呼ばれている。本報告書では自然発生源の長周期の波を採用する。

微動のパワー等は時間的に変化し、また、空間的にも変化するという特徴を持つ。微動は弾性論的には、実体波(P波、S波)と表面波(レイリー波、ラブ波)の集まりである。通常観測する微動は、複雑な微動源、伝播経路、観測場所の地下構造などに関する様々な情報を実体波や表面波の形で含んでいると考えられている(例えば、Aki、1957;Santo、1960;Toksoz and Lacoss、1968)。その表面波には波の周期(周波数)によって伝播速度が変わる、いわゆる分散性の性質がある。この分散性は地下構造に密切に関係するものである。微動アレー調査法はこの表面波の分散、すなわち表面波の周期(周波数)と伝播速度の関係から地下構造を推定する調査法である。微動の発生場所は多くの場合、地表面や海底面であると推定されるので、微動中の弾性波の勢力は実体波より表面波の方が圧倒的に優勢であると考えられる。そこで、この表面波を利用し、次の手順で地下構造を推定する手法が開発された(岡田、1990)。

@微動観測:地表に面的に展開した群列地震観測網(seismic array network;以下、アレ−と略記)により微動を観測する。

A位相速度の推定:アレ−直下の地下構造の情報を含む表面波を分散の形(位相速度−周期の関係)で検出する。

BS波速度構造の推定:その分散を逆解析して、そのような分散をもたらす地下構造を推定する。

なお、微動アレ−調査で得られる地下構造は従来の地震探査とは違い、アレーの中心点下の地下構造を平行多層で近似したものであり、各層の物性値の区分はS波速度による速度層構造として認識される。