(2)No.26(FNB:西船浅間神社)地点

この地点も昨年度に観測を実施しており、本年度に追加観測を行った地点である。既に得られている基盤の深度およびS波速度の信頼性をより確実なものとするために、アレー半径を3,000mと最大限に大きく設定し追加観測を行い、位相速度の長周期成分の信頼性を確認するとともに空間自己相関性の限界の把握をその目的として実施した。

・昨年度に解析方法として用いた「周波数別にアレーサイズ(距離)を変数とする空間自己相関係数に最適のベッセル関数をあてはめる方法」においては、位相速度曲線に「拝み」が出現し、求められた最下層は、深度2,500mに2.5km/secのS波速度であった。そこで、再解析(距離一定で周波数を変数とした時の空間自己相関係数から直接求めた分散曲線を用いた解析)を実施したところ、最下層のS波速度は深度2,380mに2.95km/secとなった。

・既に図2−74で示したように、本年度に追加観測した分散曲線を昨年度の結果と重ね合わせた図から、アレー半径3,000mの分散曲線は、解析1ブロック長409.6秒の結果において特にまとまりがなく、統合するのには不適切であり、相関性が低い結果であった。最大アレー半径3,000mの観測において、千葉県西部地域で取得された観測データは空間的な定常性が乏しく、アレー半径の大きさに限界があるものと考えられる。

・昨年度に実施したアレー半径2,000mのデータは、解析に供する1ブロックの長さが204.8秒のままであった。本年度の解析においては、1ブロック長204.8秒および409.6秒の比較を行うことを検討課題としているため、昨年度のアレー半径2,000mのデータの解析1ブロック長を409.6秒とし、追加観測のデータとの整合性を検討した。本年度の最大アレー半径3,000mの分散曲線に、昨年度のデータを重ね合わせたところ、両者の分散曲線は、ほぼ同じ低周波数領域にあることが確認され、しかもアレー半径2,000mのデータの方が相関性が良く、分散曲線のまとまりが見られた。この傾向から判断すると、最大アレー半径は2,000mと設定し、観測を行い解析を実施しても特に問題になるようなことはなく、基盤深度2,500m以浅のS波速度構造を推定する時にでも、このアレー半径(2,000m)の大きさで十分有効であると考えられる。

・fGAによる探索についてはNo.25(SMU)地点と同様に、可能な限り良質の候補解を求めるため、試行回数を10,000回に増やし、演算も10回で行い、位相速度曲線に最適なフィッティングとなる10個の候補解を求めた。

・追加観測を行い、アレー半径2,000mまでのデータを用いて解析した結果、基盤と推定される最下層の深度およびS波速度は、解析1ブロック長204.8秒で深度2,290mに3.36km/secのS波速度、昨年度の解析結果と比較すると、最下層の深度は90m浅く求まり、S波速度は0.41km/sec速い値となった。

・本年度の追加観測で取得したデータについて、観測時間は114分×2回(228分間)と十分な時間であり、また観測時の微動パワーも昨年度と比べ同等であり、ノイズについても解析が困難であるようなものは無く、観測条件に問題があるとは言えない。また、アレー半径が3,000mということで、およそ6km範囲の微動を捉える時に、この範囲にある地下構造が平行層であるのか、あるいは傾斜構造であるのかを検討した時に、既存資料からこの地点の地層は緩やかに傾斜するような構造であると推定されており、特に大きな断層の存在も無いと考えられている。このことからアレー半径3,000mのデータには空間的な定常性の限界があると考えられる。