(10)気象との関連

微動のパワーは気象現象と密接な関係があることは多くの研究で知られている。

昨年度と同様、本年度において観測を実施した期間の気圧変化、風速の変化、海洋波浪の周期変化、波高の変化等と微動のパワーの関係を考察する。

図3−11は1999年12月22日〜2000年3月9日間の千葉市(千葉測候所)の気圧変化、風速の変化を示したものである。気圧、風速の変化と微動パワーには次のような関係があると考えられる。

・気圧が下がると風速が速くなり微動パワーも強くなる。

・気圧は周期的に変化し、微動パワーは気圧変化に対し時間的に少し遅れて変化する傾向が見られる。

また、図3−12に示した海洋波浪の周期変化において、観測微動の卓越周期は4秒程度で海洋波浪の周期12秒のおよそ3分の1程度であった。波浪と微動の卓越周期との関係においては、特に顕著な相関は今回の結果からは認められない。

一方、図3−13に示した海洋波浪の波高は、外洋の漁港である銚子港の方が千葉港よりも大きく、有義波の大きさで比較すると、銚子港が約1m〜5m、東京湾内の千葉港は小さく約0.2m〜1.5mとなっている。

今回の観測も限られた期間(冬季)の気象との関連についての検討であるが、本地域において微動の長周期成分が卓越する冬期に、全26地点の大アレー(アレー半径2,000m以上)の観測を集中して実施したことは、データを取得する上で有意義であったといえる。来年度において冬期と異なる時期(夏季あるいは秋季)に2地点程度の比較観測を実施し、微動のパワースペクトルと気圧・風速、海洋波浪の変化の検討を行い、アレー半径別の最適な観測時期について考察することが必要であると考える。

これまでの考察から、次の作業が有効と考えられる。

・位相速度曲線の表示について、現在図面の横軸は周波数(Hz)表示であるが、長周期成分についてより的確な解釈ができる周期(秒)表示で行う必要があると考える。図3−15にNo.25(SMU)地点を例にとって示す。

・解析を行う場合、最初に位相速度曲線の形状把握が必要となってくる。本年度は昨年度に実施したNo.25(SMU)地点の解析資料にならい、6層モデルを基本にして(出発点として)解析を実施し、順次フィッティングの形状を考慮し層数を変化させた。最下層の速度を安定した解で求めるため、試験的にもう1層下層に加えた7層による解析を行った結果、比較的安定した解を求められる感触を得た。この結果の例としては、図3−15に示したとおりである。追加した層の速度値をどのように定義するかは課題として価値があると考える。

・基盤と推定される最下層のS波速度は現時点で未確定である。このため、前項で前述したように最下層として解析している基盤よりも深い場所に、S波速度3.00km/s前後のダミー層を仮定し、このダミー層を固定させ解析を行うことにより、これより上位の層の深度およびS波速度を確定させる方法を用いる必要があると考える。