3−1−3 S波地震探査テスト

測線両端に設置した三成分受振器により、それぞれ約300mの区間において、

・S波速度構造図(浅層部分のみ)

・S波ミニバイブを震源とするS波反射法深度断面図

・P波大型バイブロサイスを震源とするS波反射法深度断面図

が得られた。

P波深度断面図と2種類のS波深度断面図を並べたものを図2−37−2 深度とS波区間速度の関係

図2−38−1(測線東端)、図2−38−2(測線西端)に示した。

これとは別に、屈折法地震探査の発震時に三成分受振器で観測を行なった記録を取得した。

これら測線両端の三成分受振器の記録を解析した結果から次のことが明らかとなった。

・S波ミニバイブ・P波バイブロサイスの三成分受振器で取得されたデータに対して速度解析を行なったところ、両震源とも走時約2.5〜3秒までのS波速度が速度解析により求められた。これは、深度で約600〜700mの上総層群の上部に相当する。

・地表から深度約100mまでのS波速度は、およそ0.2km/sから0.4km/sまで増加する。100m以深で速度の増加は緩やかになり、下総層群下限で約0.5km/s、深度700mで0.7km/s程度になっており、測線の西端と東端で顕著な差は見られない。

・上総層群の上位までの反射波は、S波ミニバイブの記録とP波バイブロサイスの記録が比較的良く対応し、P波バイブロサイスによって発生したS波の反射波を捉えていることが確認できる。

・昨年度のS波反射法探査・下総地殻活動観測井のVSPから求めたS波速度等を参考にしながら深度変換を行なうことにより、さらに深部の反射波の存在が認められた。

・鎌ヶ谷市(S6)での屈折の発震時に観測した三成分受振器データのうち、インライン方向(測線方向)の水平成分に、見かけ速度約3km/sの波が観測された。この波は、震源付近で発生したS波の基盤の屈折波である可能性がある。

・深度700m程度までのS波反射法地震探査として、P波バイブロサイスを震源とし三成分受振器を用いる手法が有効であることが確認された。また、P波バイブロサイスを震源とするS波屈折法地震探査としては、三成分受振器で深度700m程度までの屈折波はほぼ間違いなく捉えられているものの、基盤の屈折波についてはまだ確実なものとは言えない。

・先の屈折法地震探査でP波の基盤岩屈折波が初動として現れる最小距離は、2.5km(測線東端)から4km(測線西端)であるが、S波の基盤岩屈折波が現れる最小距離は、速度構造の違いから、1km(測線東端)から2km(測線西端)と短くなっている。