(2)求められたS波速度構造

SPAC法で解析した位相速度曲線のデータから、fGAを用いたインバージョンで探索を実施した結果、大中小3セットアレー観測7地点のS波速度構造を推定することができた。

図2−83−1図2−83−7図2−83−1図2−83−2図2−83−3図2−83−4図2−83−5図2−83−6図2−83−7)に、大中小3セットアレー各地点毎の観測位相速度曲線とfGA探索結果(図中上段)および最終結果(図中下段)を示す。

初期モデルは、No.25(SMU)地点およびNo.26(FNB)地点の解析結果を参考として最初の出発点を6層モデルとして逆解析を実施した。逆解析において位相速度曲線とのフィッティングを行う場合、例えば6層構造が適切ではないと判断した時は、1層多い場合あるいは1層少ない場合で逆解析を再度行い、最適なフィッティングをとるものを最終解とした。本年度の逆解析においては、観測位相速度曲線と計算値とのフィッティングの具合によって、1層少ない5層モデルで最終解を求めた。

また、fGAによる速度層の層厚およびS波速度の探索範囲は、最終的に位相速度曲線の形状から表3−7−1、表3−7−2、表3−7−3に示す3種類のパラメータを用いて、観測地点ごとにその範囲を変えた。当初、7地点の逆解析は、No.25(SMU)地点およびNo.26(FNB)地点にならい、fGAの探索回数を試行回数1,000回の演算を5回実施して候補解を得たが、最終結果を求めるにあたっては、fGAによる探索について、可能な限り良質の候補解を求めるために、試行回数を1,000回から10,000回と10倍に増やし、演算も5回から10回と2倍に増やして実施した。この結果、観測位相速度曲線にフィッティングの良い10個の候補解を求め、これらの候補解から最終結果を求めた。試行回数が多くなったことによって、当初求めた候補解よりも位相速度曲線の収束具合が向上し、フィッティングが良くなった。

大アレーの解析時のブロック長による違いは、低周波数領域において影響してくるものである。解析1ブロック長204.8秒で解析を行った結果を赤色で、また解析1ブロック長409.6秒で解析を行った結果は青色で色分けした。

これらの結果から、各地点における第1層〜第6層(第5層)の深度およびS波速度について、解析1ブロック長204.8秒の結果を表3−8および表3−9に一覧として示す。

また、解析1ブロック長409.6秒の結果について、最下層よりも上位の層の深度およびS波速度は、解析1ブロック長204.8秒の結果とほとんど同じであった。ここで、解析1ブロック長409.6秒の結果について、基盤と推定される最下層(第5層あるいは第6層)のS波速度を表3−10に示す。

ここで、最下層(第6層に相当する)のS波速度については位相速度の信頼性の検討・吟味を行う必要があるため、現時点では推定値(未確定)として示している。