(3)昨年度データとの比較

図2−73に昨年度および本年度(最大アレー半径3,000mのデータを含む)の位相速度曲線とS波速度構造を示す。この図から0.2Hz(5秒)よりも低周波数領域(長周期側)の位相速度は、昨年度より本年度の方が大きい結果であった。

最下層の深度およびS波速度について比較すると、昨年度は最下層として深度2,380m以深に2.95km/sのS波速度を求め、本年度は追加観測を行い最大アレー半径3,000mのデータを含め解析を行い、最下層として深度2,460m以深に3.81km/sのS波速度を推定した。この時点で求めた値について、最下層よりも上位の層は、各層の深度およびS波速度ともに昨年度求めた値とほぼ同じであった。

ここで、本年度求めた最下層のS波速度は、微調整前の段階の結果であり、この時点ではS波速度を3.81km/sと推定したが、これは昨年度SPAC法を用いて解析を行って求めたS波速度の値、2.95km/sよりもかなり大きい値であった。これらのS波速度の値の違いと解析時の1ブロック長との関係を検討するため、昨年度に観測したアレー半径2,000mのデータを1ブロック長409.6秒で再解析を試みた。

図2−74に本年度のアレー半径3,000mのデータおよび昨年度のアレー半径2,000m以上のデータを、解析1ブロック長409.6秒で解析した位相速度曲線を示す。本年度の結果を赤色、昨年度のうちアレー半径2,000mのデータは青色、それ以外のアレー半径のデータは黒色と色分けして示す。この図から、昨年度観測したアレー半径2,000mのデータについては1ブロック409.6秒の長さで解析した分散曲線にまとまりがあり、アレー半径2,000mの一部の分散曲線は、アレー半径3,000mの分散曲線に重なる傾向が見られた。また、図2−75には図2−74の分散曲線を統合させた統合後の位相速度曲線を示す。