図2−57にNo.25(SMU)地点におけるSPAC法によるfGA計算結果(図中上段)と最終結果(図中下段)の位相速度曲線および推定S波速度構造をそれぞれ示し、また表3−4には推定した地下構造のパラメータを昨年度と本年度の結果をそれぞれの年度別に分けて示した。ここで、fGAによる探索については、当初、昨年度と同じパラメータである試行回数1,000回の演算を5回行い5つの候補解を計算する方法で行ってきたが、可能な限り良質の候補解を求めるため、試行回数を10,000回と10倍に増やし、演算も10回と2倍多く行い、位相速度曲線にさらにフィッティングの良い10個の候補解を求める方法で実施した。この結果から、解析1ブロック長204.8秒の時に最下層として、深度1,570mに周波数0.16Hz(周期6.25秒)で2.57km/secのS波速度を、1ブロック長409.6秒の時に最下層として、深度1,550mに周波数0.16Hz(周期6.25秒)で3.05km/secのS波速度をそれぞれ推定した。ただし、現時点においては最下層のS波速度を確定することは困難である。
この追加観測を実施したNo.25(SMU)地点の解析を参考として、他の地点においての解析に供する1ブロック長を原則的に204.8秒のデータで行うこととした。また、観測結果と既存資料等とを比較・検討を行う場合、最下層の深度や上位層の深度およびS波速度の比較・検討を行う場合には、他の全ての地点において1ブロック長204.8秒の結果を用いることと統一させた。
ここで求められた位相速度の信頼性について、数値シミュレ−ションによる「アレ−サイズと推定可能な位相速度の最大波長との関係」に基づいて吟味する。
これによると最大アレ−半径をR(m)、最小アレ−半径をRmin(m)、この時の位相速度 を5%の誤差以内で推定できる位相速度の波長をλ(m)とすると、
2Rmin≦λ≦10R(SPAC法) @
√3Rmin≦λ≦(3〜5)R(F−K法) A
なる関係がある。
解析に供した最大アレ−半径は2,000mであることから、@式より推定可能な位相速度の最大波長は、SPAC法で20,000mとなる。一方観測で求められた位相速度は周波数0.16Hz(周期6.25秒)で約1,950m/secであることから、波長は約12,200mとなり推定可能な範囲にあることから信頼性があると判断した。