図2−50は得られた地震計設置点の観測波形例である。
図2−51は観測記録のパワ−スペクトル例である。スペクトルパタ−ンは観測中にはほとんど変わらず、時空間定常性を確認できた。各地点における観測波形およびパワ−スペクトルは別冊に付した。
図2−52は各地震計間の距離毎による空間自己相関関数(図中の上段)と空間自己相関係数(図中の下段)の一例である。なお、空間自己相関関数を方位平均したものが空間自己相関係数である。この空間自己相関係数曲線は滑らかなベッセル関数型の変化を示し、標準偏差幅が狭いほど観測結果の信頼性が高いとされる。また、この空間自己相関係数曲線の急傾斜部に対応するような周波数領域においての位相速度の推定は信頼性が高い。本地点で得られた空間自己相関係数は概ね滑らかなベッセル関数型の変化を示しており、観測結果に信頼性があると判断された。
図2−53は各周波数毎の最小二乗法によるベッセル関数のフィッティング例を示したものである。図中のエラ−バ−は、採用した空間自己相関係数の標準偏差幅を示している。全空間自己相関係数および各周波数毎の最小二乗法によるベッセル関数のフィッティングは別冊に付した。
本年度の解析は、昨年度No.25(SMU)地点で実施した「周波数別にアレーサイズ(距離)を変数とする空間自己相関係数に最適のベッセル関数のあてはめ」、いわゆるESPAC法(以下、ESPAC法という)と、昨年度No.26(FNB)地点で再解析を行った方法「距離一定で周波数を変数とする空間自己相関係数からの分散曲線の推定」いわゆるSPAC法(以下、SPAC法という)の2通りの方法を採用し位相速度曲線を求めた。
図2−54にESPAC法で求めた位相速度曲線を示す。本年度の解析結果である分散曲線は赤色で示し、昨年度の分散曲線は黒色で色分けを施した。図中の上段は、全アレーの解析ブロック長を204.8秒で解析したもので、下段は最大アレー半径2,000mの解析ブロック長のみ409.6秒で解析したものである。解析ブロック長が大きくなると低周波数(長周期)側で位相速度が増大する傾向が認められた。
図2−55にSPAC法で求めた位相速度曲線を示す。これは各アレ−サイズ毎の分散曲線を年度別に色分けしたものである。また、図中の上段は204.8秒、下段は409.6秒で解析したものである。SPAC法の解析でも、ブロック長が大きくなると低周波数(長周期)側で分散曲線の位相速度が増大する傾向がみられ、これはESPAC法と同様の結果となった。
図2−56は図2−55で求めた分散曲線を統合したもので、SPAC法の統合位相速度曲線である。図中の上段は204.8秒、下段は409.6秒である。位相速度曲線の表示の下に、個々の位相速度曲線上のそれぞれの値について、観測値と位相速度曲線の理論値との差を相対誤差(百分率)として表示させたものを付け加えた。相対誤差を示すグラフを比較すると、1ブロック長204.8秒も409.6秒もほぼ同じ値を示す。
昨年度および本年度の追加観測で得られたデータから1ブロックの長さが204.8秒、409.6秒ともに位相速度の周波数(周期)の範囲は0.16Hz(6.25秒)から3Hz(0.33秒)までであった。