(1)観測方法

観測は以下の手順で行った。図2−46に作業手順のフローを示す。

・ 都市現況図(1/2,500)により観測点(地震計設置点)の予備設定を図上で行い、それをもとに観測場所の下見によって設置場所の確保の可能性や車両、工場振動、野外重機等の非定常ノイズ(以後「非定常ノイズ」という)源の有無等を確認した。距離の誤差は、5%以内に収めるように設置点を決定した。

・ 観測地点(地震計設置点)が私有地の場合は、所有者に許可を求めた。また道路を使用する場合は、各市町村の警察署に道路使用許可申請を行い、許可を得た。

・ No.25(SMU)下総地殻活動観測井については、観測内容、設置場所や日程等を国立防災科学研究所に事前に説明して許可を得た。

・ 観測は各点独立記録方式を採用し、地震計1台毎に記録器を設置して微動データを収録した。観測に際しては、地震計の水平を保ちつつ充分に地面と接するよう注意した。

・ 観測に先立ち、使用する機器を近接設置して5分程度の微動観測を行うキャリブレ−ション(ハドルテスト)を実施し、コヒ−レンス等を求めて使用機器の特性が揃っていることをチェックした。図2−47にハドルテスト記録の一例を示す。

・ デ−タのサンプリングは100Hz(10ms)とした。また各地震計による微動観測開始時間の誤差は2.1ms以下とした。GPSの時刻更正は、必ず観測開始前に実施した。

・ デ−タの吸い上げを行い、波形のチェック、スペクトル分析等を行って観測されたデ−タが解析に使用できないと判断した場合には、再観測を実施した。

・ 観測は非定常ノイズの少ない時間帯を原則としたが、事前調査における非定常ノイズの状況から判断して例えば、No.25(SMU)などの住宅地、農地等比較的郊外にあるような場所では昼間の観測を実施し、No.26(FNB)などの鉄道、道路、工場密集地等では深夜の観測を実施することとした。また、昼間に観測を実施した地点で特にノイズの多かった場合は夜間に再観測を実施した。

・ 通常の観測時間は基本的に60分としたが、長周期側の波(基盤の深度やS波速度を推定する際に必要である5〜7、8秒の波)ができるだけ多く含まれるように、すなわち解析品質を向上させることを目的として、大アレ−での観測時間は、通常の2倍の114〜120分間とした。また、今後の解析に供するためにNo.9(YCY)およびNo.14(SRC)においては通常の4倍の114分×2回の観測を実施した。

昨年度の課題として、解析面について1ブロックあたり204.8秒(10Hzサンプリングで、2,048サンプル;以下204.8秒という)の一定時間のデータを基本的な単位として取り扱うことに関して、同じブロック数の中で短周期側の波の個数と長周期側の波の個数には最初から差があることについて再考察を要することがあげられた。

0.22Hz(約4.5秒)よりも低周波数領域の位相速度推定の信頼度をさらに向上させるために、解析に供するブロックデータ中の長周期側の波の個数を増やすように工夫することが望ましいとの考えにより、大アレーの観測時間を前回の2倍にとり、長さ114〜120分間と設定した。

表2−7−1表2−7−2に観測日時一覧を示す。また表2−8に使用機器一覧を示す。