入力モデルは、まずは昨年度調査測線との交点で、速度と構造が同じになるように設定した。そして、構造を反射法から求まった深度断面図(図2−17)を参照しながら決定し、速度のみを変えていってもっともモデルと観測値の走時のずれが少ないと思われるものをモデル1(図2−27 の上図)とした。
このモデルでは、どうしても東端の発震点(S5)で、第2層からの屈折波が第1層と第3層(基盤岩)の屈折波よりも前にあらわれる部分が生じる。ところが、観測データでは第2層からの屈折波は常に遅れた相としてあらわれている。この矛盾を説明するために、第2層をモデル1よりもやや深く設けたモデル2を作成した。
このモデルによるレイトレーシングの結果をに示す。
モデル2は、はぎとり法で求まった第2層の構造とほぼ同じ位置に見られる反射法の反射面を境界として設定した。最終的なモデルは図2−27 の下図に示すようなモデルとなった。これは、モデル1よりも観測走時とモデル計算走時のずれがすくない。
どちらのモデルも、各発震点直下で速度構造を与え、速度境界面は発震点間で直線内挿している。表層構造は、P波反射法地震探査で使用した速度と求まった深度を平滑化したものを入力している。(高々20m程度のため、この図では識別できない。)
下総層群に相当する堆積層の速度は、深度0mで1.6km/s、深度400〜500mの基底で1.7km/sとし、この間の速度は深度に比例して増加するように設定した。
上総層群に相当する堆積層の速度は、深度200〜400mで2.0km/s、基盤直上で2.2km/sになるようにし、間は線形に内挿した。
基盤岩の速度は、S5とS7の見かけ速度の調和平均で約5.7km/sとなり、またタイムターム法の結果からも5.6km/s前後の速度が得られていることから、昨年度と同様に5.7km/sに固定した。
レイトレーシングと実データの初動読み取り値の比較を図2−28−1、図2−28−2、図2−28−3に示す。この図は、屈折波強調処理後の記録と、10受振点ごとの初動読み取り値 ・レイトレーシングの結果求まった走時のグラフ、最下段にレイトレーシングのパスを並べて表示したものである。